一般的に、界面活性剤を鋳型としたナノ材料の合成には、界面活性剤を一度溶かしてミセルにしてから、無機種と協奏的に自己集合させることで鋳型となる液晶が作り出される。

それに対して今回の研究では、剛直な鋳型としてクラフト点(界面活性剤の溶解度曲線の溶解度が急激に立ち上がる温度)以下で形成される固体相の界面活性剤が利用され、その層間でアモルファスシリカの析出が行われた。このようにして合成されたアモルファスシリカは単層で剥離できることが見出され、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた測定により、厚さ0.9nmのアモルファスシリカナノシートの合成が実現されたとする。

  • 今回の研究のイメージ

    今回の研究のイメージ (出所:プレスリリースPDF)

さらに、同ナノシートが安定に分散したコロイド溶液も得られており、数か月後であっても凝集しないほどの高い分散安定性を示すことが確認されたという。また、ラングミュアー膜(両親媒性物質を水面上に展開した時にできる、物質一層の厚さの膜)を利用した精密集積により、1nmレベルで厚さを制御した極薄膜の構築にも成功したともしており、構築された極薄膜は、+1Vの電圧を印加した際の電流密度が10-9Acm-2と、優れたリーク電流特性を示すことも確認されたとする。

  • 界面活性剤固体を鋳型として利用したアモルファスシリカナノシート合成のイメージ

    (左)界面活性剤固体を鋳型として利用したアモルファスシリカナノシート合成のイメージ。(中央)AFM像。(右)アモルファスシリカナノシートの分散したコロイド溶液の外観画像 (出所:プレスリリースPDF)

なお、アモルファスシリカは絶縁膜やフィラー、プロトン伝導体などとして、さまざまな分野で利用される汎用的な素材であることから、研究チームでは今回の成果について、アモルファスシリカ超薄膜の活用法に新たな指針を与えるものとして期待されるとしている。