化学メーカー大手の独Merckは2月8日、台湾・高雄市の半導体科学技術園区において、半導体材料工場である「Merck Kaohsiung Semiconductor Technology Center」の建設を開始、起工式を執り行ったことを発表した。

新工場は、2025年からの稼働予定で、半導体薄膜形成およびパターニング用の特殊ガスおよび半導体材料の生産を行う予定としている。同社にとっても世界最大級の巨大工場という位置づけで、400名を超す雇用機会が創出されると説明している。

新工場では、先端半導体プロセス材料を台湾のみならず世界中の顧客に供給するほか、主要な消費地である台湾での現地生産を強化することで、輸送で発生する二酸化炭素の排出量の削減につなげるなど、持続可能な開発というコンセプトを設計段階から取り入れており、再生可能エネルギーの活用や雨水回収システムなどの手法も取り入れることで、カーボンニュートラルの達成に寄与し、資源消費を削減するという自社の持続可能な目標に沿ったものとなっているという。

また、すでに計画されている区画に加えて、拡張の余地もあり、将来の市場ニーズに応じて生産ラインと設備の拡張を図ることも可能としている。同社は、新たな生産ラインとその拡大に向けて台湾にて170億NTドルを投資することを決定している。すでに同社は、2022年10月に高雄市で、特殊ガスや材料の輸送システムを製造する工場を開設済みで、今回の投資は、高雄市における第2期工事という位置づけとなる。

  • 「Merck Kaohsiung Semiconductor Technology Center」の起工式の様子

    「Merck Kaohsiung Semiconductor Technology Center」の起工式の様子 (出所:Merck)

Merckが半導体事業で重視するアジア地域

同社は2021年9月、半導体・エレクトロニクス事業のイノベーションと能力強化に向けグローバルで展開する成長戦略「Level Up」を発表し、2025年末までにアジアおよび米国を中心に、30億ユーロ以上の大規模な投資を行う計画を示していた。今回の新工場建設もこの戦略の一環となる。

日本でも2022年4月、半導体材料の研究開発(R&D)製造における主要拠点である静岡事業所(静岡県掛川市)の強化を中心に、日本の半導体・エレクトロニクス事業部門に対して、2025年までに1億ユーロ以上の投資を行うと発表しているほか、2023年1月には韓国Mecaroの化学品事業の買収を完了し、半導体製造用薄膜材料の開発/生産能力を強化している。同社は、有機EL(OLED)材料に関しても、韓国・平澤市に続き2022年9月、中国・上海市にも製造拠点を開設。米国でも、2023年中にTSMCの米国進出に対応するべくアリゾナ州チャンドラーに新工場を開設することを計画している。