日本オラクルはこのほど、人的資本経営に関する説明会を開催した。説明会では、人的経営資本の動向、日本企業が人的資本経営に取り組むにあたっての課題、人的資本経営の実現を支援するクラウド・アプリケーションの紹介が行われた。
グローバルで開示要請が高まる人的資本
常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 善浪広行氏は、人的資本経営に注目が集まっている背景について、次のように説明した。
「現在、ESGの改善や開示要求や人財不足など、グローバルで事業環境が変化している。そうした中で企業価値の向上を目指し、変化に対応するため、経営戦略の策定と実行が必要となっている。具体的には、中長期の経営戦略に合わせ、事業と人財のポートフォリオを最適化することが求められる」
そして、人的資本経営の動向として、グローバルで開示要請が高まっており、ガイドラインの整備が進んでいる。国内では、企業の人的資本に関する情報を「有価証券報告書」に記載し、ステークホルダー(利害関係者)の公開を義務づける「人的資本開示の義務化」が決定されている。
金融庁は、有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4000社を対象に、2023年3月期決算以降の有報に人材投資額や社員満足度といった情報の記載を求めるとしている。
また、同社がCFOを集めてラウンドテーブルを開催したところ、パーパス経営の在り方や人的資本が議題に上り、善浪氏は経営層の関心事項が人に寄ってきていることを実感したそうだ。
日本企業が人的資本経営においてとるべき2つのアプローチ
また、善浪氏は日本の労働生産性の低さを踏まえ、日本企業において、人財戦略と経営戦略をひもづけることが一番の課題になっていると指摘した。こうした中で、「パーパスと事業をどう見直すか、人材の流動性が上がっていく中で企業と従業員の関係をどう変化させていくかが、大事になる」と同氏は語った。
善浪氏は、「私の部署はSaaSによって変わった。しかし、日本全体を見た時、まだ生産性が低いので、変えていきたいと考えている。これからはビジネスモデル、パートナーとの関係を変える必要がある」と、自身の経験も踏まえた上での方針を説明した。
善浪氏は同社の人財経営については、「自社のソリューションを活用して、タレントマネジメントをやってきたが、定着には10年くらいかかった。その中で、各事業において会社の方針に合わせて、タレントマネジメントができるようになることは大切だと学んだ」と紹介した。
さらに、日本企業がとるべきアプローチとして、「経営戦略と人材戦略」を同期することに加え、生産性に寄与する人的投資を行うことがある。これを実現するため、同社はさまざまな機能を拡充しているという。
人的資本経営にむけた施策を検討する際の3つのポイント
人的資本経営を支援する同社のクラウド・アプリケーションについては、クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部 HCMソリューション部 部長 矢部正光氏が説明を行った。
矢部氏は、人的資本経営にむけた施策を検討する際、「As is-To beギャップの定量的把握」「従業員エンゲージメントの向上」「リスキリング・人材育成」という3つのポイントに注目すべきと述べた。「As is-To beギャップとして、何を定量化するかが難しいという企業の声を聞いている。よって、これを実現することで、企業は競合他社との差別化を図っていけるのではないか」(矢部氏)
これら3つのポイントに対し、オラクルは以下のようにクラウド・アプリケーションを提供している。
「As is-To beギャップの定量的把握」の支援
「As is-To beギャップの定量的把握」の実現に向けては、「Oracle Cloud ERP」「Oracle Cloud HCM」が財務情報と非財務情報の連動により、経営戦略と人事戦略の連動を支援する。
両ソリューションは、「予算管理と連動した人事戦略の立案」「需要/供給予測からのGAPの可視化」「各種ドライバを用いたシミュレーション」「構成員のスキル状況確認」を実現する。
「Oracle Fusion HCM Analytics」では、ワークフォース、離職、ダイバーシティ、報酬、パフォーマンスに関するデータの分析と予測が行えるよう、定義済みのダッシュボードとKPIが追加された。
「従業員のエンゲージメント向上」を支援
「従業員のエンゲージメント向上」については、「Oracle ME」の「Oracle HCM Communicate」が「各種人事施策の浸透状況の把握(モニタリング)とそれを踏まえた各種施策検討」をサポートする。
加えて、「Oracle ME」の「Oracle Journey」では、パーソナライズされた、状況に応じた、ガイド付き、どこからでもアクセス可能といったエクスピリエンスを提供するようにアップデートされており、人事関連のさまざまなイベントに従業員を効果的に導くことができるようになった。
「リスキリング・人材育成」を支援
「Oracle Dynamic Skills」では、各人のプロファイル情報やAIを組み合わせることで、リスキリングの推奨、キャリアの推奨、トレーニングの推奨が可能になった。AIを活用することで、新たな気づき・発見を期待できる。
また、「Oracle ME」の「Oracle Touchpoints」により、管理職は従業員の感情を定期的に把握・追跡することができ、これらに対処することで、信頼関係の構築、従業員定着率の向上、成長の促進につながる有意義なインタラクションを生み出す。