東京農工大学(農工大)は2月6日、半導体微細化技術によって小型化したグラフェンセンサと自作のポータブル検出器を利用して、有害物質として知られる重金属「カドミウム」の化合物を溶液中で検出することに成功したと発表した。

同成果は、農工大大学院 工学府物理システム工学専攻の吉井智哉大学院生、農工大 工学部生体医用システム工学科の西胤ふう香学部生、同・木川田和希学部生、農工大 工学研究院 先端物理工学部門の前橋兼三教授、同・生田昂助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、センサに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Sensors」に掲載された。

重金属化合物は、太陽電池や光センサなどのさまざまな分野で利用されており、産業上有用だ。しかし、重金属の一種であるカドミウム化合物がイタイイタイ病を引き起こしたことがよく知られているように、重金属は高い生体毒性が大きな懸念材料となっている。重金属による被害を出さないためにも、事故や災害などで漏出した際に早急に検出できる技術の確立が求められている。

従来、カドミウムのような重金属を検出するためには、高価で大型の分析装置を利用しなければならなかった。そのため、そうした分析装置を有する専門機関にすぐに持ち込むことが難しい事故や災害現場、離島などでは、早期の重金属検出が難しいという課題を抱えていた。

そこで研究チームは今回、これまでの研究で開発してきたグラフェンセンサを社会実装する上で重要な「小型マルチチャネル電流検出器」を自作し、持ち運び可能なセンサ系を利用して、溶液中でのカドミウム化合物の検出を目指すことにしたという。