HBC Studyは、妊婦と、2007年12月から2012年3月までの間に生まれた1258名の子どもたちの成長(身体発達、神経発達)を縦断的に追いかけた大規模疫学研究で、外遊びが神経発達によい影響を与えることが知られていることから、以下の仮説を立てたという。

  1. 2歳でSTが1時間超の子どもは、4歳の神経発達学的予後スコアが低い。
  2. 2歳でST1時間超の子どもが、2~4歳で十分に外遊びをすると、4歳の神経発達学的予後スコアが通常範囲に収まる。

STが神経発達に望ましくない影響を与えるのか、あるいは、STが増えると外遊びが減ることを通じて神経発達に影響するのか。もし仮説2が正しければ、仮にSTが神経発達に望ましくない影響を与えるとしても、外遊びを増やせば望ましくない影響を減らせるのではないかと、考察したという。

この仮説の検証のため、今回、HBC Studyに参加した子どものうち885名を対象に、4歳の神経発達学的予後としての「コミュニケーション機能」「日常生活機能」「社会機能」の得点、2歳での「1日あたりのST」、2歳8か月での「1週あたりの外遊び日数」のデータを利用して、3つの変数の関連を媒介分析という手法を用いて解析することにしたとする。今回は、STと神経発達学的予後との関連を説明するかもしれない第三の変数(交絡因子)として、「母親の教育歴」「父親の教育歴」「1歳6か月における発達障がいの傾向」の有無が考慮されたという。

調査の結果、以下の3点が判明したとする。

  1. 2歳のSTが長い(1日1時間超)と、4歳のコミュニケーション機能が少し下がる。この低下は、2歳8か月の外遊びを増やしても(1週6日以上)、減らない。
  2. 2歳のSTが長い(1日1時間超)と、4歳の日常生活機能が少し下がる。この低下は、2歳8か月の外遊びを増やすと(1週6日以上)、大幅に減る。
  3. 2歳のSTが長くても、4歳の社会機能は低下しない。

これらの結果から、2歳のSTは、4歳の「コミュニケーション機能」「日常生活機能」を低下させるが、その影響の程度は限定的であり、特に「日常生活機能」への影響は2~3歳に十分な外遊びをすることで緩和される可能性があること、また2歳のSTは4歳の「社会機能」に明確な影響を与えていないことが示されることとなったという。

なお、研究チームによると、子どものSTをどのようにコントロールすべきか、社会全体で考えていく必要に迫られているとしているほか、その影響を減らす外遊びなどの介入方法の深化も求められるとしている。