大阪大学(阪大)は2月18日、日本人の赤ちゃんの顔について形状を分析し、かわいさが高いと評価される顔の特徴を明らかにしたと発表した。

同成果は、阪大大学院 人間科学研究科の入戸野宏教授、同・大橋紅音(研究当時)、大阪電気通信大学の小森政嗣教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、心理学全般を扱う最大手の学術誌「Frontiers in Psychology」に掲載された。

一般的に、自分の子どもでなくても、赤ちゃんに対してかわいいと感じる人は多い。赤ちゃんを見ると、無条件で笑顔になってしまうなどという人も少なくないことだろう。このようなことから、赤ちゃんの顔には、多くの人が共通して「かわいい」と感じる特徴があるのではないかと推測される。

ヒトは特定の物理的特徴に対してかわいいと感じると提唱したのが、オーストリアの動物行動学者のコンラート・ローレンツで、今から80年ほど前の話である。ローレンツは、このことを「ベビースキーマ」(赤ちゃん図式)と命名。こうしたベビースキーマに関する研究は、これまで白人の赤ちゃんの顔画像を使ったものが多く行われてきた。そうした中、研究チームは今回、日本人の赤ちゃんの顔画像を用いた同様の実験方法で「かわいさ」に対する研究を実施することにしたという。

まず、保護者から提供された生後6か月の赤ちゃん80名の無表情・正面顔の画像を材料として、200名の日本人男女(20~69歳)により、「まったくかわいくない」から「非常にかわいい」まで7段階でかわいさの評定が行われた。そして顔ごとの平均得点に基づき、かわいさの高い方から10名と低い方から10名の顔が選出され、その上でそれぞれの顔画像の平均化処理が行われ、かわいさが高い顔と低い顔が合成された。

これらの顔の形状が分析されたところ、かわいさの低い顔から高い顔に変化させるためには、顔のどの部分を変形させればよいかというパターンも確認されたという。得られたパターンは、これまでに知られているベビースキーマの特徴に一致したものだったとした。

さらに、この変形パターンが50枚の赤ちゃんの顔に適用され、かわいさを増やした顔と減らした顔が作成された。その上で587名の日本人男女(20~69歳)に対し、この50ペア(100枚)について、よりかわいいと感じる顔を選ばせるというインターネット調査が実施された。その結果、およそ9割の人がかわいさを増やした顔を選択するという結果となった。しかし若い男性は、女性や中高年の男性に比べて、正答率が低いという結果が得られたという。

  • 赤ちゃんの顔

    画像を合成して作られたかわいさが高い顔(左)と低い顔(右)のプロトタイプ(原型)。6か月児80名の顔のかわいさが、20~69歳の日本人200名によって評定された。かわいさの得点が高い10名の平均顔と、得点が低い10名の平均顔がそれぞれ求められた (出所:阪大Webサイト)

研究チームはこの結果から、赤ちゃん顔の「かわいさ」は、個人の好みとは別に、客観的な特徴として存在することが示されているとした。

  • 赤ちゃんの顔

    かわいさを増やす/減らす方向に変形させた顔のペアから、よりかわいい方を選ぶ課題を587名の成人が行った (出所:阪大Webサイト)

今回の研究により、日本人の赤ちゃん顔のかわいさも、ベビースキーマの特徴に基づいて評価されていることが確認できたとした。作成された「日本版かわいい乳児顔データセット(Japanese Cute Infant Face [JCIF] dataset)」は、インターネット上で公開されている。今後、国内だけでなく海外でも、この刺激セットを用いた「かわいい」に関する研究が行われることが期待されるとした。

  • 赤ちゃんの顔

    ほとんどの人が赤ちゃん顔のかわいさの違いを識別し、よりかわいい方を選んだが、若い男性は正答率が低かった(587名のデータに基づく) (出所:阪大Webサイト)