Intelは1月10日、同社のFPGA製品のラインナップを拡充、「Agilex 5/7/9」を追加した事を発表した」。また、併せて「Agilex 3」という存在も公表した。

同社は昨年9月、「Sundance Mesa」というコード名の新しいFPGAシリーズと、ミッドレンジ向けのAgilex Dシリーズの製品発表予告を行っていた。もともとAgilexシリーズはMulti-Chip構成のFPGAであったが、Agilex DシリーズはMonolithicなFPGAとなることが予告されていた(Photo01)。

  • Agilex Dの構成

    Photo01:Agilex Dの構成

さて、今回発表されたのはそのAgilexが、Core iシリーズやXeon Wシリーズ同様に9/7/5/3のラインナップに分かれた事だ(Photo02)。

  • Agilex 9/7/5のラインナップ

    Photo02:Agilex 9/7/5のラインナップ

順に説明してゆくと

Agilex 9

Direct RFという名称からも判るようにRF向けの製品で、携帯電話の基地局とか航空宇宙(レーダーの制御とか)なども視野に入れた構成である(Photo03)。

  • 左側がAGRW014、右がAGRW027/AGRM027の構成と思われる

    Photo03:左側がAGRW014、右がAGRW027/AGRM027の構成と思われる

こちらは引き続きMulti-Chip構成で、FPGAのFabricそのものは10nm SuperFinを利用して製造され、ここにAIB(Advanced Interface Bus)を経由する形でI/O Tileが接続される(Photo04)。

  • このAgilex 9には最大64GbpsのSample Rateを持つADC/DACが搭載される

    Photo04:このAgilex 9には最大64GbpsのSample Rateを持つADC/DACが搭載される

面白いのはこのAgilex 9はカスタマイズ可能であり、コアをFPGAからeASICに切り替えた状態でOptical/AI/CPU/SecurityなどのI/FやEngineを組み合わせる事も可能、とする(Photo05~08)。

  • 要するにSilicon Opticsを直接ここに統合する形

    Photo05:要するにSilicon Opticsを直接ここに統合する形

  • 昔ならここにMovidiusのVPUを付けるといった話になったのだろうが、今は何を想定しているのだろうか?

    Photo06:昔ならここにMovidiusのVPUを付けるといった話になったのだろうが、今は何を想定しているのだろうか?

  • AtomクラスのCPUならI/O Tileのサイズに収まりそうではある

    Photo07:AtomクラスのCPUならI/O Tileのサイズに収まりそうではある

  • 何となくこれは書いただけと言う気もしなくはない

    Photo08:何となくこれは書いただけと言う気もしなくはない

全体としてみると、これは従来のAgilex FPGAの派生型(超高速ADC/DAC搭載RF特化モデル)というところであろう。現在発表されている3製品のスペックは表1の通りである。

  • Agilex 9として発表されている3製品の主なスペック

    表1 Agilex 9として発表されている3製品の主なスペック

Agilex 7

こちらもAgilex 9同様、FPGA Fabricは10nm SuperFinで製造され、それにI/O Tileが組み合わされるMulti-Chip構成の製品である。

実をいうとこのシリーズはちょっと変な事になっていて、元々2019年4月に発表されたAgilex 10シリーズが、全部Agilex 7シリーズにRenameされている。なので、今年1月10日発表にも拘わらず一部の製品は2019年4月から出荷中、という妙な状況になっている。

このAgilex 7は3つのシリーズが用意される。それぞれのシリーズの特徴をまとめたのが表2である。

  • Agilex 7の3シリーズの特徴

    表2 Agilex 7として提供される3シリーズの特徴

もう少し具体的に説明すると、「Fシリーズ」は性能と消費電力のバランスを取った、広範なアプリケーション向けと言うか、要するに汎用(Photo09)であり、現時点で19製品がラインナップされているが、うち16製品はAgilex 10からのRenameである。

  • 要するにAgilex 10そのままである

    Photo09:要するにAgilex 10そのままである

「Iシリーズ」はPCIe 5.0/CXL I/Fを持ったアクセラレータ向け。116Gのトランシーバも搭載(Photo10)したモデルで現在10製品がラインナップされている。こちらも5製品はAgilex 10からのRename品で、5製品が新規追加となっている。

  • PCIe 5.0およびCXL対応のI/O Tileを搭載したほか、SerDesも116Gになった

    Photo10:PCIe 5.0およびCXL対応のI/O Tileを搭載したほか、SerDesも116Gになった

「Mシリーズ」はIシリーズにHBM2eを追加したモデル(Photo11)である。実はAgilex 7ではこのMシリーズのみIntel 7プロセスを使った新規のものである。現時点ではまだ具体的な製品リストがIntel Arkに登録されていないのだが、AGM032(324.5K LE、15.9Mbit M20K SRAM、16/32MB HBM2e)とAGM039(385.2K LE、19Mbit M20K SRAM、16/32MB HBM2e)の2製品がある事だけは判明している。

  • DDR5/LPDDR5のI/FとHBMのI/Fを追加したM-Series

    Photo11:DDR5/LPDDR5のI/FとHBMのI/Fを追加したMシリーズ

Agilex 5

こちらもIntel 7で製造される、やはり今回新規投入される製品。こちらはDシリーズとEシリーズの2つの製品があり、どちらもMonolithic構成になっている。表3に主要な特徴をまとめたが、冒頭で名前が出て来たSundance Mesaは、このAgilex 5のEシリーズの方である(わざわざEシリーズのみSundance Mesaだと断っているあたり、Dシリーズの方は異なるらしい)。

  • Agilex 5のDシリーズとEシリーズの特徴

    表3 Agilex 5のDシリーズとEシリーズの特徴

Dシリーズは性能と電力効率に最適化した製品で、広範な分野に適用可能とされ、一方Eシリーズは消費電力およびサイズを最小化したい製品向け、とされている。

なお、表にあるAI Performanceであるが、この数字はLE数とほぼ比例しているため、恐らくはLEを利用してAI Inferenceの処理を行った場合の性能と考えられる(少なくともAI向けのAcceleratorを何か搭載しているという訳ではない)。

こちらもまだIntel Arkには製品が登録されていないが、DシリーズはA5D010/A5D025/A5D031/A5D051/A5D064、EシリーズはA5E013A/A5E028A/A5E043A/A5E052A/A5E065Aとどちらも5製品ずつ用意されている事はすでに公開されている。

扱いとしてはAgilex 9は特定用途向けで、Agilex 7が従来のAgilex 10のマーケットをそのまま引き継いだレンジ、Agilex 5がAMD XilinxのZynq Ultrascale+ MPSoCとか最近発表されたLattice Avantなどと競合するミッドレンジ向け、と考えれば良いかと思う。特にAgilex 5でもEシリーズの方はそのパッケージサイズの小ささも相まって、さらに下であるLattice Certus-NXのマーケットも視野に入れている感じだ。

  • Agilex 5はLPDDR4にも対応するなど、ミッドレンジ向けと考えられる

    Photo12:Agilex 5はLPDDR4にも対応するなど、ミッドレンジ向けと考えられる

冒頭でも触れたが、これに加えて新たにAgilex 3も予定されている。こちらの詳細は未公開であるが、AMD XilinxのArtixとかLatticeのCertus-NXやそれ未満のグレードを狙っている様に思われる。長年こうしたミッドレンジ~ローエンドマーケットに新製品が無かったIntelだが、やっと色々刷新を行う事にしたようだ。