国立極地研究所(極地研)と情報通信研究機構(NICT)の両者は12月27日、2022年2月上旬に発生した磁気嵐の発生メカニズムの分析に加え、現在試験運用中の大気圏・電離圏モデル「GAIA」を用いて磁気嵐による大気密度増加をシミュレーションすることで、SpaceXの数十基のスターリンク衛星が大気圏に再突入(落下)して喪失に至った原因を明らかにしたと共同で発表した。

同成果は、極地研の片岡龍峰准教授(総合研究大学院大学兼任)、NICTの塩田大幸主任研究員、同・陣英克主任研究員、同・垰千尋主任研究員、同・品川裕之研究員、成蹊大学の藤原均教授、九州大学(九大)の三好勉信准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、太陽圏の宇宙天気/気候に関する幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「Journal of Space Weather and Space Climate」に掲載された。

2022年2月3日にSpaceXが打ち上げた49機のスターリンク衛星のうちの38機は、同月上旬に発生した磁気嵐の影響を受け、大気圏へと落下して喪失した。スペースXの発表では、衛星の打ち上げ後に大気ドラッグが50%ほど増加したことを受け、約210kmの低高度において大気ドラッグを低減する安全モードへと移行したものの、結局最大40機が復旧不可能となり、目標の高度350kmまで上昇することができずに失われたという。

この大きな被害をもたらした磁気嵐は、規模としては決して大きなものではなく、1か月に1回ほどの割合で発生する程度のありふれたものだったとする。それにもかかわらず、数十機もの人工衛星が大気圏へと再突入したことから、注目が集まっていた。

なお、衛星が投入された高度200km付近の大気については、観測が少ないことから磁気嵐の影響などの理解が十分に進んでおらず、過去の研究では、せいぜい極域にて25%程度の大気密度の増減が知られていたのみだった。そこで研究チームは今回、2022年2月の磁気嵐の発生メカニズムの解析を試みたとする。