研究チームによると今回の磁気嵐は、太陽から放出されたコロナ質量放出が地球に到来して発生したもので、1つの磁気嵐が終了した後に連続してもう1つの磁気嵐が起こるという変則的なものだったことが特徴だという。コロナ質量放出によって磁気嵐が2回連続して起こる例は稀であり、特に2度目の磁気嵐の予測は難しいものだったという。

  • 磁気嵐を引き起こした2つのコロナ質量放出(黄色部分とオレンジ部分)

    磁気嵐を引き起こした2つのコロナ質量放出(黄色部分とオレンジ部分)(出所:NICT Webサイト)

そこでまず、磁気嵐が連続して起こった原因を解明するため、複数の衛星・探査機による太陽と太陽風の観測データの分析が行われた。その結果、実際は2つのコロナ質量放出が太陽から放出され、それらが連続して到来したことで、2回の磁気嵐が引き起こされたことが判明した。

次に、弱い磁気嵐だったとはいえ大気ドラッグが50%も増加したこと、つまり高度200km付近の熱圏の大気密度が50%増加したということが、既存の大気モデルから予想可能だったかどうかの検証が行われた。

検証の結果、過去の観測データの統計に基づいて作成された「経験モデル」による大気密度の増加は25%程度だったのに対し、大気の物理プロセスを計算するシミュレーションモデルとして、九大・成蹊大・NICTによって共同開発された大気圏・電離圏モデル「GAIA」を用いたシミュレーションでは、磁気嵐によって加熱されて膨張した大気が極域から低緯度に広がり、50%の密度増加がグローバルに現れることがリアルタイムに予測できることが確認されたとする。

  • GAIAによって計算された高度200kmの大気質量密度(2022年2月4日21時世界標準時)。磁気嵐発生前からの変動がパーセントで表示されている

    GAIAによって計算された高度200kmの大気質量密度(2022年2月4日21時世界標準時)。磁気嵐発生前からの変動がパーセントで表示されている(出所:NICT Webサイト)

研究チームは今後、複数の衛星・探査機による太陽や太陽風の観測データと、コロナ質量放出のシミュレーション結果を詳細に比較することで、理解が不十分であり予測が困難なコロナ質量放出の詳細な構造を定量的に調査する予定としている。

また今回の研究では、熱圏領域における大気シミュレーションモデルが、衛星運用の場で用いられる経験モデルより高い再現性能を持つことが示された。GAIAは現在、NICTにて宇宙天気予報の参考情報として試験的に実時間の計算が実施されており、今後はGAIAの実用化に向け、試験運用を続けると同時に改良を行い、さらに誤差や限界についての評価も行うとした。