中国の賽微電子(Sai MicroElectronics)のスウェーデン子会社(MEMSファウンドリ)Silex Microsystemsは、2021年12月14日付で独Elmos Semiconductorが保有する独ドルトムントの200mm車載半導体工場を総額8500万ユーロで買収すると発表していたが、独政府は、国家安全保障や中国政府への機密技術ノウハウの流出に対する懸念が高まったことを受けて、中国勢への売却を11月に入ってから阻止したと欧米の多数のメディアが報じている。

独政府は、10月までは、中国勢による買収を許可する方向で審査していたが、最近になって技術の中国への流出や国家安全保障を巡る懸念が急に強まってきたという。独ショルツ首相は最近、訪中し、習国家主席と会談するなど、親中派と言われているが、経済相はじめ一部の大臣が中国への技術流出や国家安全保障への懸念を表明しており、今回の工場売却差し止めは経済相が主導したと見られている。

Elmosは1984年設立の自動車用半導体専業メーカーであり、独ドルトムントに本社を構えている。Silexが買収しようとしていた工場は0.35μmプロセスのアナログCMOSラインである。Silexは顧客と従業員を引き継ぎ、この工場をファウンドリとして操業し、少なくとも2027年まではElmosに現行製品を供給し続けることにしていた。Elmosは自社でレガシー半導体ファブを操業するより、レガシープロセスの旧製品はSilixに製造委託し、2022年秋から130nmプロセスの新製品をSamsung Electronicsに製造委託し、ファブライトからさらにはファブレスを目指そうとしていた。

一方、Silexは専業MEMSファウンドリとして知られ、スウェーデンと中国に工場を持つ。今回の買収でSilexはすでに保有するMEMS工場にアナログCMOS製品をポートフォリオに加えたかったようだ。

独政府は、 中国資本による別のドイツの半導体企業の買収提案も差し止めたと発表したが、企業名は公表されなかった。ドイツの半導体業界関係者の話では、バイエルン州を拠点とするERS Electronicsとみられているが、ERSの広報担当者は、自社を売却する計画はないが、中国のプライベートエクイティ(PE)会社から投資を受ける選択肢を検討していたと話しているという。