AITRIOSの新サービスの位置づけ
ソニーセミコンダクタソリューションズは、エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS(アイトリオス)」の新サービスとして、「Console Developer Edition(コンソールデベロッパーエディション)」の提供を開始する。
Microsoft Azureのテナント上に構築したAITRIOS環境において、アプリケーションデベロッパーやAIデベロッパーが、ソリューション開発および運用を、簡単に行えるように支援。必要な環境やツール、機能などを提供することで、自前のインフラを用意することなく、エッジデバイスのセットアップや、クラウドへの接続、アプリケーションやAIモデルの開発、ソリューションの運用を、手軽に実施できる環境を構築できるのが特徴だ。作業工数の増加やエンジニアの人員数やスキル不足など、パートナー企業が抱える課題解決に貢献するという。
ソニーセミコンダクタソリューションズ システムソリューション事業部 統括部長の辻裕樹氏は、「AITRIOSは、すでに世界各国で20件以上の実証実験を進めており、その結果、多くのパートナー企業から実用化に向けた評価をもらい、課金モデルによる運用を開始できる見込みがたった。Console Developer Editionの有償提供を開始することで、センシングソリューションの社会実装を加速することができる。また、ソニーセミコンダクタソリューションズにとっては、初のリカーリングサービスを本格始動させることになる」と位置づけた。
Console Developer Edition は、AITRIOS上のマーケットプレイスで販売。まずは日本でのサービス提供を開始し、2023年度上期から、海外にも順次展開していくという。
ソニーセミコンダクタソリューションズのAITRIOSは、AIカメラなどのエッジデバイスを活用したセンシングソリューションの効率的な開発、導入を可能にするプラットフォームであり、様々なマーケットに向けて、ヒトやモノのセンシングとデータの可視化を通じて、日常の体験を、より快適に、便利に、安全にするとともに、省人化や活人化を行い、生産性を高め続ける社会インフラを構築できるという。
マイクロソフトと共同イノベーションラボを設置
AITRIOSに対応したエッジデバイスの第1弾として、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発し、2020年5月にリリースしたインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」および「IMX501」がある。AI処理に特化した独自のDSPを搭載しており、高性能化を実現するだけでなく、プライバシー保護、省電力化、小型化などにもメリットがあり、これを搭載したAIカメラなどにおいて、高速なAIエッジ処理を可能にし、映像データを活用したアプリケーションの利用範囲を広げている。
これまでにIMX500およびAITRIOSを利用した企業からは、メタデータのみの出力でプライバシーに配慮できる点や、クラウドへ大量の画像データのアップロードが不要になる点、カメラが小さくて設置しやすいこと、高速で推論結果を得られるといった点に評価があがっているという。
「AITRIOSでは、カメラによる映像データをAI処理により小型化でき、温度センサーや湿度センサーなどのIoTデバイスから発信されるデータと同じように、データを軽量化して配信できる。入口はデータ量が多いビジョンだが、出口はIoTデバイスのデータのように少なくできる点が特徴だ。そうした特徴を活かして、AITRIOSは、これまでカメラやイメージセンサーが入ることができなかった市場をはじめ、様々な領域に向けて展開ができると考えており、小売、ビル、工場、物流、農業、建設、医療などの分野にもおいても活用が期待される」としている。
実証実験では、店舗での来店客カウント、棚監視・在庫量検知、回遊動線・ヒートマップ、混雑度をもとにした空調調整、道路での信号無視検出、バス運行最適化、駐車場での空きスペースの検知、自動車のナンバー検知などに利用されているという。
さらに、ソニーと日本マイクロソフトの協業により、共同イノベーションラボを設置。IMX500とマイクロソフトのAzure Cognitive Servicesを組み合わせて、システムインテグレータなどが、小売業界や製造業向けなどに様々なソリューションを開発している。
今後は、民間企業やスタートアップ企業のほか、研究機関、教育機関などにおいても、AITRIOSの利用を想定しているという。