日本マイクロソフトは12月7日、Microsoft AIとAzure AI関する記者説明会を開催。Microsoft CloudのAI機能やパートナーとの協業について説明した。

同社のAIのポートフォリオはMachine Learning Platform、Azure Cognitive Services、Applied AI Services、Power Platform、Applicationsの5階層になっている。下3層が開発者&データサイエンティスト向け、上位2層がビジネスユーザー向けとなっている。

  • マイクロソフトのAIのポートフォリオ

同社のAIのポートォリオは、このようにロール別で提供しており、一般のオフィスワーカーであればMicrosoft 365、営業やマーケティングなどにはDynamics 365、ノーコード/ローコードで開発する人向けにはPowerプラットフォーム、開発者やデータサイエンティスト向けにはAzureを提供する。

Azure AIは3段構成で、一番下にエンドツーエンドの機械学習サービス「Machine Learning Platform」があり、その上にカスタム可能な学習済みAIモデル「Azure Cognitive Services」があり、API経由で利用。最上段には業務シナリオに特化したサービス群「Applied AI Services」があり、こちらはビジネスシナリオが決まっているユースケースで使われるサービス群となっている。

  • Azure AIの3層

日本マイクロソフト Azure ビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 小田健太郎氏は、「これらの共通プラットフォームとして提供している機械学習(MLOps)、共通データプラットフォームがマイクロソフトの特徴、強みとなっている」と語った。

  • 日本マイクロソフト Azure ビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 小田 健太郎氏

  • AIの共通プラットフォーム

また、もう1つの強みが、マイクロソフトリサーチという研究機関の存在だという。

「マイクロソフトリサーチは設立から30年が経ち、その間に開発されたアルゴリズムやモデルの精度を製品にフィードバックしており、このサイクルを早く回すことがマイクロソフト AIの強みになっている」(小田氏)

  • マイクロソフトリサーチ

同社のAIの利用用途で多いのがナレッジマイニング(全文検索)、会話AI(Bot)、ドキュメントプロセスの自動化(OCR)、機械翻訳、音声の文字お越しと分析の5つだという。

  • AIの利用用途

この中のナレッジマイニング、音声の文字お越しと分析の領域がニーズも高く、同社も注力し、今後、投資を拡大していくという。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長 上原正太郎氏は、AIを実装するアプローチについて、「利活用することから始めることが重要だ。目的を持った上で、すでに構築されたAIサービスやプラットフォームを利用する。こうすることで小さく始めることができる。また、ナレッジを社内共有するしくみがあることも重要だ。さらに、経営陣が人材育成にコミットすることも重要になる」と語った。

  • 日本マイクロソフト 業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長 上原正太郎氏

  • AIを実装するアプローチ

上で述べたように、同社のAIのポートフォリオは5階層となるが、11月2日には、この中のAzure Cognitive ServicesにAzure OpenAI Serviceを追加したことを発表した。これを利用すると文章の要約、文章の作成、ソースコードの生成の自動化が行えるという

同社は2019年からのOpenAIとの協業を開始しており、2020年6月にOpenAIの大規模言語モデルであるGTP-3のライセンスを発表している。

Azure OpenAI Serviceは、Azure上からOpenAIの言語モデルGPT-3を利用できる。小田氏はAzure OpenAI Serviceは、OpenAIのAPIを介した利用に比べ、エンタープライズレベルのデータプライバシーやガバナンスを効かせて利用できる点やスケールアウトが容易である点、他のAzureサービスと一緒に請求や管理ができる点がメリットだとした。なお、Azure OpenAI Serviceは現在、招待制で利用できる。

  • Azure OpenAI Service

さらに12月2日には、同社はローソンとの協業を発表した。この協業では、カメラや音声データと店舗運営支援を図る「店舗運営支援AI」を活用した実証実験を2021年11月から開始している。

新たに設置したカメラやマイクで取得したデータ(売場の通過人数や顧客の滞留時間、棚の接触時間、商品の購入率など)を個人が特定されない形で可視化し、POSの売上データなどと合わせて、Microsoft Azure上に構築した「店舗運営支援AI」が分析するという。

分析したデータを参考に棚割や販促物掲出など各店舗の状況にあわせた売場に改善し、来店客にとって買いやすい売場の実現と店舗の利益向上を図る。同AIの分析結果は各店舗に適した施策の優先度の可視化に利用するほか、既存の店舗施策の有効性の確認やSV(スーパーバイザー)による店舗経営指導にも活用する。

  • ローソンとの協業

さらに先日、ソニーセミコンダクタソリューションズと、パートナー企業や顧客のソリューション開発、プロトタイプ開発、テスト支援等を目的に東京都港区芝に設立した共同イノベーションラボにおいて、AIカメラを活用したソリューション開発に向けた技術トレーニングの本格提供を開始した。

このラボでは、マイクロソフトのMicrosoft Azure上で提供するAIサービス「Azure Cognitive Services(人間の認知機能をAPIとして利用可能)」や、世界で初めてAI処理機能を搭載した、ソニーのインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」を使ったトレーニングと技術検証を行っている。

本ラボにはソニーとマイクロソフトの技術エンジニアがおり、ソニーは、ラボの取り組みに必要なリソースを提供。加えて、各参加企業は、ソリューションの効率的な開発・導入を支援するソニーのエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」を提供する、

  • ソニーセミコンダクタソリューションズとの協業

なお、同社は12月14日、15日の2日間、オンラインイベント「Azure AI Days 2021 Winter」開催する予定で、この中でもソニーセミコンダクタソリューションズとの協業の内容やAzure AIについて語られる予定だ。