理化学研究所(理研)、大阪大学(阪大)、東北大学の3者は10月27日、連星中性子星合体に対して一般相対性理論に基づいた数値シミュレーションを行い、合体後に放出される重力波の波形から1cm3当たり1兆kgを超える超高密度物質の性質が詳細に読み取れることを示したと発表した。

同成果は、理研 数理創造プログラムのホワン・ヨングジア研修生、理研 開拓研究本部 長瀧天体ビッグバン研究室の長瀧重博主任研究員(理研 数理創造プログラム 副プログラムディレクター)、阪大 インターナショナルカレッジのバイオッティ・ルカ准教授、東北大大学院 理学研究科の古城徹准教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

連星中性子星の合体までの重力波は観測されているが、合体後は今のところはできていない。そのため、数値シミュレーションで研究が進められており、合体後の中性子星は、ラグビーボールやダンベルのような形につぶれることが示されている。これに起因する重力波の周波数は、高速回転する中性子星の回転周波数の約2倍、約3kHzという高周波になると予測されている。そうした中で研究チームは今回、重力波天文学への新提案を試みることにしたという。

ハドロン物質を構成するハドロン同士が互いに重なり合う寸前まで極限的に圧縮されると、ハドロン物質が融解するという。そして、素粒子からなる新物質「クォーク物質」に連続的に変化する「ハドロン-クォーク連続性」という理論予想がされている。この変化は重い中性子星において、中でも合体後に発現している可能性があるという。

  • ハドロン-クォーク連続性の概念図

    ハドロン-クォーク連続性の概念図 (出所:理研Webサイト)

研究チームは、ハドロン-クォーク連続性に基づく状態方程式(物質の圧力と密度の関係)を構築し、天体物理学の数値シミュレーション用に「クロスオーバー型高密度状態方程式(CO型状態方程式)」として公開している。今回はその数値テーブルを用いて、連星中性子星合体の一般相対論に基づく数値シミュレーションが実行された。