宇宙システム開発利用推進機構(JSS)とさくらインターネットは10月12日、経済産業省事業として開発・運用されている衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」に、同日からJSSが衛星データプロバイダとして参加し、宇宙実証用ハイパースペクトルセンサ「HISUI(Hyperspectral Imager SUIte:ひすい)」のデータを無料公開したことを発表した。

またそれを受けて10月14日には、経済産業省(経産省)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、JSSの3者が、経産省がJAXAとの連携により、HISUIで取得したデータをTellusに搭載し、10月12日より一般公開を開始したことを発表した。

  • ISSの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに取り付けられているHISUI

    ISSの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに取り付けられているHISUI(矢印) (c)NASA(出所:経産省Webサイト)

経産省がJSSとともに開発したHISUIは、JAXAとの連携協定のもと、2019年12月に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置され、2020年9月より画像の取得を実施中だ。「きぼう」の船外実験プラットフォームは、さまざまな機器や技術の宇宙実証、および地球観測の場として活用されているが、HISUIもセンサとして有用性実証を目的として同プラットフォームに設置された。

JSSは、宇宙システムに関する開発、調査研究、国際協力、普及啓発および人材教育を行い、宇宙技術の利用推進や国民経済の健全な発展および国際社会への貢献などを目指した活動を行っている一般財団法人で、衛星データ利用のさらなる促進のため、今回、衛星データプロバイダとして参加し、HISUIのデータを無料公開することにしたとする。

通常のマルチスペクトルセンサ(光学センサ)が観測できる波長帯は、多くても十数バンドだが、HISUIは、185バンドという非常に高い波長分解能を有しており、従来よりも詳細に物質の識別が可能となっている。たとえば、宇宙空間から識別できる鉱物の種類が、従来の10種類から30種類に増えるなど、石油資源や鉱床の遠隔探知能力の向上につながることが期待されているほか、HISUIのデータは、石油・鉱物資源以外にも、環境分野、農林水産分野、防災分野などのさまざまな分野への活用が期待されているという。

  • TellusでのHISUIのデータ画像の一例

    TellusでのHISUIのデータ画像の一例。画像は瀬戸大橋付近 (出所:さくらインターネットWebサイト)

HISUIのデータは順次拡充する計画で、2022年度中に運用開始から最新のものまで約19万シーンを公開する予定としている。HISUIのデータは、これまでJSSから共同研究者に限定的な提供が行われていたが、一般個人でも閲覧可能な環境で提供されるのはTellusが初となるという。Tellusはインターネット環境があれば、誰でも登録することが可能だという。

  • HISUIのデータ利用実証事例

    HISUIのデータ利用実証事例。(1)石油資源分野。(2)金属資源分野。(3)レアアース資源探査。(4)沿岸海域分野。(5)メタンガス検知。(6)二酸化炭素検知。(7)プラスチックの抽出・同定。(8)農業分野 (出所:経産省Webサイト)

JSSはTellusを通じて、より多くの利用者にHISUIのデータを届けることにより、衛星データの利用の発展に尽力していくとしている。また、さくらインターネットは、今後も随時Tellusのアップデートを行い、より魅力的なプラットフォームにしていくとしており、「宇宙アセットを民主化する」というビジョンのもと、Tellusを通じて衛星データと地上データの産業利用を促進していくとしている。

なお、経産省は現在、国内の企業が衛星データ利用ビジネスに参入することを支援する目的で、「衛星データ無料利用事業者の公募」を実施している。これは、Tellusに搭載されている無料または有料の衛星データのうち、通常は有料の商用衛星データおよびデータの解析環境を、公募で選定された企業(250件程度)に無料で提供するプログラムとなっている。