メモリ業界への影響

米商務省の新たな規制によると、DRAMは配線のハーフピッチ18nmプロセス以下が規制対象となり、その製造に必要な装置を輸出する際には、商務省による審査とライセンスが必要になるという。

この動きは、中国のDRAM事業の持続可能な開発を制限または遅らせることになるとTrendForceでは見ている。中国のDRAMサプライヤであるCXMTは、2022年第2四半期以降、19nmプロセスから17nmプロセスへの移行に取り組んできたが、米国政府がそこを狙い撃ちした模様である。CXMTは、将来ニーズを満たすための製造装置の購入を規制開始前に進めていたようだが、量的には不十分だとみられる。そのCXMTは、SMICと協議中の合肥およびSMBC(SMIC Jingcheng)の第2期工事を含む新工場建設を続けている模様である。

この規制は無錫にあるSK HynixのDRAM生産センター C2工場にも影響を与える模様である。同工場は、世界のDRAM生産能力全体の約13%を占め、そのプロセスは1Y nm以降へと進化を続けており、先端DRAM生産に必要な設備を今後も継続的に追加するには、米商務省による承認が必要となるとされる。

TrendForceはこうした規制の動きほか、地政学的リスクを考慮すると、3大DRAMメーカー(Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technology)は、今後10年間で母国での生産能力を強化する一方、中国での生産比率を減らす可能性が高いと予測している。

一方のNANDも、特に128層以上のNAND製造に用いられる装置については、事前承認が必要となる。そのため、この動きは、中YMTCの工場アップグレードという長期計画、およびSamsungの西安工場や大連のSolidigm(旧Intel)のプロセス移行計画に影響を与えるとTrendForceは予測している。

なお、TrendForceでは、今回の米国政府による規制が、YMTCの顧客獲得の動きを制限すると見ている。現段階では、YMTCは2023年に中国外の顧客のサプライチェーンへの浸透を期待して、検証のためにSSD製品を海外顧客に積極的なサンプル出荷を行ってきたが、米国の規制が強化されるにつれて、中国外の顧客が中国企業の製品を採用することが制限されることが想定されている。