慶應義塾大学(慶大)は10月5日、弾性表面波デバイスの表面で起こる極めて小さな振動現象の変位を、1兆分の4m、つまり4pmの精度で定量的に決定することに成功したと発表した。
同成果は、慶大大学院 理工学研究科の岩崎綾華大学院生、同・西川大智大学院生、同・立野翔真大学院生(研究当時)、同・理工学部 物理学科の岡野真人専任講師(研究当時)、同・山野井一人助教、同・能崎幸雄教授、同・渡邉紳一教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会協会が刊行するフォトニクスに関連する全般を扱う学際的な学術誌「APL Photonics」に掲載された。
弾性表面波とは、弾性体の表面付近にエネルギーが集中して伝わる波のことで、不要な周波数成分をカットするためのフィルターとして、弾性表面波を応用したデバイスが携帯電話やスマートフォンなどに内蔵されて活用されているほか、近年では、電子スピンを操作する目的でも弾性表面波デバイスが活用されており、次世代の磁気デバイスとして有望視されている。
弾性表面波デバイスでは、デバイス表面上を「レイリー波」と呼ばれる表面波が伝搬することが知られている。レイリー波の正体は、表面近くの弾性体部分の楕円運動であり、その伝搬時に、デバイス表面がどれだけ振動しているのか(変位しているのか)を正確に計測することは、デバイスの性能評価をする上で重要だとされている。
そうした表面変位量計測には、これまでレーザー干渉計が用いられてきたが、デバイス表面からの反射光と、光学系のそのほかの部分からの反射光を分離することが困難であるため、計測量の定量性が損なわれるという問題がしばしば生じていたとする。
そこで研究チームは今回、複数の波長の光による干渉計測が同時に行えるデュアルコム干渉計を用い、観測したい反射面からの信号のみを分離抽出することで、測定の定量性を向上させることにしたという。