各種の測定の結果、「磁気的な悪魔の階段」に近い27T以下の領域において、中間相として「隠れた状態」が存在することが判明。理論計算による予想では、この隠れた状態は「スピンネマティック状態」という、スピンの量子的な液晶状態である可能性が示されていると研究チームでは説明する。

なお、研究チームでは、近年、固体・気体といった古典的概念が量子磁性体に対しても適用できることが議論されているが、今回の研究成果は、量子的な液晶を確認したという点で、今後の量子磁性体の理解がさらに加速していくことが期待されるとしている。

  • 「磁気的な悪魔の階段」の概略図

    (上)SrCu2(BO3)2における「磁気的な悪魔の階段」の概略図。過去の磁気的な測定では、27T以下に相は確認されていなかったという。(左下)26Tにおける比熱の温度依存性。絶対温度0.5~0.6Kで比熱に異常が現れ、「隠れた状態」への相転移が示唆されている。(右下)温度・磁場相図上での「隠れた状態」の領域(ピンク)。悪魔の階段の手前に、今回発見された磁気的に「隠れた相」が存在することがわかる (出所:東大 物性研Webサイト)