東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は9月6日、国際運用されている「フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡」のデータを解析し、天の川銀河の銀河面に対して垂直に約5万光年の大きさを持つ泡状構造「フェルミ・バブル」内で最も明るい部分のガンマ線放射の多くが、地球から約7万光年にある天の川銀河の衛星銀河の1つである「いて座矮小楕円銀河(Sgr dSph)」に由来するものであることを明らかにしたと発表した。

同成果は、Kavli IPMUのオスカー・マシアス特任研究員(現・オランダ・アムステルダム大学 GRAPPAセンター 博士研究員)、オーストラリア国立大学のローランド・クロッカー准教授を中心とした、Kavli IPMUの堀内俊作客員科学研究員、同・安藤真一郎客員科学研究員も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

約10年前にフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡により、天の川銀河の中心において、およそ5万光年におよぶ泡状構造を持ち、天の川銀河の円盤面に垂直な形で上下方向に砂時計型をしたフェルミ・バブルが発見されたものの、これまでに同構造は、どのようにして発生したのかがわかっていなかったという。

一方で同構造には、非常に強い(明るい)ガンマ線を放射する謎の下部構造がいくつか確認されていた。その代表が、南側にある最も明るいスポットである「コクーン」で、当初は天の川銀河中心の大質量ブラックホール「いて座A*」の過去の暴発によるものと考えられていた。

地球からそのフェルミ・バブルを通して観測できるのが、直径は約1万光年で質量は天の川銀河の約1/1000というSgr dSphで、天の川銀河の中心から約5万光年の極軌道を周回しており(これまでの数十億年の間に約10周したものと推定されている)、過去には天の川銀河の銀河円盤を通過したこともあるという。そのときに星間ガスの大部分を失い、今では同銀河の多くの星が細長い帯状に引きはがされている。星間ガスに乏しいため、もはや星形成の場ではなく、ガンマ線放出の可能性としては、ダークマターの対消滅や未知のミリ秒パルサー集団などが推測されていたという。

そこで研究チームは今回、フェルミ宇宙望遠鏡のデータを解析し、フェルミ・バブル中で天の川銀河北半球のジェットと南半球のコクーンと、Sgr dSphの位置が重なっていることに着目。Sgr dSphからのガンマ線放射の起源を検証するため、フェルミ宇宙望遠鏡によって観測されたガンマ線放射を、テンプレート解析によってコクーンを含む関心領域上に当てはめることにしたとする。