NVIDIAが8月31日(米国時間)、AmpereアーキテクチャのGPU「A100」ならびにHopperアーキテクチャの次世代GPU「H100」について、中国やロシアの顧客に向けて販売するには米政府の承認が必要との通知を米国政府から受け取ったことが、同社が米証券取引委員会(SEC)に提出した書類より明らかになったと、米国の複数メディアが報じている。米政府はこれらの先端GPUが中国やロシアで軍事用途に使用されたり、転用されたりするリスクに対応する処置としているという。

NVIDIAは、直接ロシアに半導体を輸出していないが、中国には輸出しており、その出荷が制限されることで59億ドルとしている2023会計年度第3四半期の売上高見通しに影響が生じる可能性がある。同社によると、四半期売上高が最大4億ドルほど減少する可能性があるという。中国の顧客とは予定されていた購入内容を別商品で代替する協議を続けているが、代替品が十分でなければ米政府に許可を申請する可能性もあるという。

A100とH100は、その性能の高さから、より高度なAIモデルを構築するための活用が期待されている。今回の米国政府の命令により、H100の開発を適切なタイミングで完了することができなくなる恐れもあると、NVIDIAはSECへの提出書類で述べている。

一方のGPUの雄であるAMDも、同社の手掛けるGPUの一部製品の対中輸出に関して米国政府の許可を必要とする通知を受け取ったとしている。

中国商務省の束珏婷報道官は9月1日の定例記者会見で、米国による半導体の対中輸出規制に断固反対すると述べ、米国側の動きは米中双方の企業の正当な権利と利益を損ねるものだと主張している。