台湾最大の日刊紙「自由時報」の経済メディアである「自由財経」によると、ナンシー・ペロシ米下院議長の訪台以降、TSMCが米国アリゾナ州に、新たに3nm製造プロセスのファブ建設を検討しており、2年後に着工するとの観測が浮上しているという。
米国で半導体製造を計画している企業に補助金を支給する「CHIPS法」が8月9日に成立したことと関連があると台湾業界関係者は見ているという。
TSMCは、すでにアリゾナ州に1,100エーカー(約445ヘクタール)の土地を取得し、Fab 21と命名した5nmファブの建設を進めており、2024年に量産を開始する計画である。同ファブの生産能力は、月産2万枚を予定しており、TSMCでは、2021年から2029年にかけて約120億ドルを投資するとしている。噂される3nmプロセスを採用する新ファブは、このFab 21の隣接地に建設される見込みだという。
TSMCは、米国での追加投資を検討していること自体は認めたものの、ペロシ米下院議長の訪台とは関係ないとしているという。また同社は、先端の研究開発はあくまでも台湾国内で行うことを強調しており、台湾政府も、最先端技術の海外持ち出しや最先端製品の海外での生産を認めない方針を打ち出している。
ただし、もし米国での3nmファブが稼働を始めるころには、台湾のファブでは2nm未満の超微細プロセスでの生産が始まっており、3nmプロセスは最先端プロセスとは言えなくなっている見込みであり、実際に建設に着手する可能性はないとはいえない。実際、Fab 21についても、建設発表時点では、世界最先端プロセスであったものの、量産稼働の時期には最先端プロセスではなくなる見込みであり、もし3nmファブの建設が決まれば、同じパターンとなることが予想される。
米上院議員が台湾でTSMC幹部に米国投資促進を要請
ペロシ米下院議長の動きとは別に、米上院外交委員会アジア太平洋小委員会の筆頭委員であるエドワード・マーキー上院議員を代表とする議員団が8月14~15日にかけて訪台。マーキー議員が自身のWebサイト上で、TSMCの海外投資チームの代表と会談したことを明らかにし、「米国半導体サプライチェーン(供給網)を改善し、米国投資を促進するための協力関係構築などについてTSMC幹部と協議した」と述べている。
ただし、この訪台がTSMCの米国での3nmファブ投資判断にどの程度影響を与えるのかどうかについては不明である。