さまざまな取り組みの結果、光ノイズの低減が実現したことで、これまでは光ノイズのために不可能だった実験も可能になったとする。たとえば、およそマイクロメートル以下の、薄膜ターゲットを用いた放射圧加速による「レーザーイオン加速」が挙げられるとする。

理論的に提唱されている高強度レーザーを使った放射圧加速では、既存の高周波を用いた線形加速器よりも1千万倍以上も高い加速勾配(電界強度)を生成可能であるため、極短時間に、そして効率的にイオンを高エネルギーにまで加速することが可能だという。

さらに、短寿命のイオン核種を相対論効果が生じるレベルの高エネルギーにまで加速させることで、崩壊前に原子核と衝突させられるようになる。その結果、これまでは天体現象でしか生成する可能性がなかったような、要は人の手では生成することができなかった新しい核種を作れる可能性も出てくるという。

また、この加速機構を用いることで、量子メスプロジェクトの中で進められている、レーザー駆動による次世代重イオン加速器をさらに小型化することも期待できるとしており、研究チームでは今後、重イオンの発生から加速、そして照射に至るまでをこれらのレーザー加速技術を駆使し、夢の超小型加速器の実現を目指すとしている。

また、光ノイズのさらなる低減を目指し、プラズマミラー技術を2回用いる「ダブルプラズマミラーシステム」を2023年以降に開発し、従来の10万分の1という世界トップクラスの低光ノイズ性能も目指すともしており、そのダブルプラズマミラーシステムを用いて、数nmという厚みの数十層の原子層からなる標的を対象とした、放射圧加速の実証実験を実施する計画ともしている。

  • J-KAREN

    (左)J-KAREN。緑色に光って見えているのは、強力な励起レーザー光のため。(右)従来のJ-KARENと、今回のシングルプラズマミラー化、さらに今後のダブルプラズマミラー化の性能と、世界のレーザー施設との比較 (出所:量研機構Webサイト)