トモエゴゼンはおよそ数百個の赤色矮星を一度に観測でき、短時間に発生するフレアを効率的に探索可能だという。今回は2019~2020年に撮像されたデータのうち、フレア探索に適した40時間分の観測データが解析され、総計約5700個の赤色矮星における明るさの短時間変動が調査された。その結果、22件の短時間かつ強力なフレアの検出に成功したという。

22件のフレアは数秒から数十秒の短時間で、通常時に比べて数割から最大で20倍程度の増光が示されたとする。これらは、これまでに検出された赤色矮星が起こすフレアの中で最も短時間の増光現象であり、非常に強力な磁場によるエネルギー解放が発生していることが示唆されるとした。

  • 赤色矮星の表面で発生した短時間フレアの想像図

    赤色矮星の表面で発生した短時間フレアの想像図 (C)東京大学木曽観測所 (出所:東大Webサイト)

また、ほかの望遠鏡で取得されたデータを用いて、今回フレアが検出された赤色矮星のスペクトルや回転周期などの調査も行われた。その結果、分光データが存在する11天体中10天体のスペクトルに、強い活動性を示す輝線が存在することが確認された。このことは、今回検出された短時間フレアが、活動的な恒星にて発生しやすいことを示唆しているという。

検出された短時間フレアのすべてが活動的な恒星で発生すると仮定すると、おおよそ1日に1回程度の頻度で、今回検出されたような短時間フレアが発生している見積もりになる。このことは、短時間フレアが活動的な赤色矮星で、日常的に発生している可能性を示唆するものだとしている。

一般にフレアは急激な増光が示されたのち、すみやかに減光に転じ、最終的になだらかな減光を示す。今回トモエゴゼンによる高速観測によって、この一連の光度変化が詳細に解明された。特に減光にかかる時間が増光にかかる時間に比べて長く、最大で10倍ほどの違いがあることが示されたという。

  • 今回検出された赤色矮星における、フレアの光度変動例

    今回検出された赤色矮星における、フレアの光度変動例。約10秒間に星の明るさが2倍程度にまで増光している。上列には光度曲線の時刻に対応して、10秒露光に相当する画像(24秒角×24秒角の視野に対応)が約28秒間隔で示されており、フレアの瞬間に画像上でも増光していることがわかる (C)東京大学 (出所:東大Webサイト)

研究チームでは、今回の短時間フレアにおける一連の光度変動には、磁気リコネクションが関わっていると推測している。それにより大量にエネルギーが解放されることによって恒星大気が強烈に熱せられ、そこから光が漏れ出てくるというシナリオが提案された。このシナリオと観測された光度変動とでは、矛盾がないことも示されたとしている。

  • 赤色矮星のフレアの増光時間とエネルギーの関係

    (左)赤色矮星のフレアの増光時間とエネルギーの関係。薄青点はトモエゴゼンによって検出された恒星フレアで、オレンジ点はTESS宇宙望遠鏡によって検出された恒星フレア。赤線は1000ガウスの磁場を仮定したときのフレアの時間スケールとエネルギーの間の理論的に予想される関係。(右)今回検出された22件の恒星フレアにおける光度変動。横軸は時間、縦軸は星の相対的な明るさの変動が示されている。図中の青線は30秒の長さの幅に対応 (C)東京大学 (出所:東大Webサイト)

また今回は、秒刻みの高速観測により、これまで検出が困難だった短時間かつ強力なフレアの検出にも成功した。今回検出されたような短時間で増光する強力なフレアは、高エネルギー粒子や紫外線などを伴う可能性もある。そのため、系外惑星における生命居住性の議論にも影響を及ぼし得ると考えられるという。

今後は、トモエゴゼンによって赤色矮星とは異なる種類の恒星や若い恒星などを調べることで、フレアを始めとする未知なる秒変動を引き続き探索していく予定としている。