東京大学 木曽観測所は7月11日、同観測所の口径105cmの木曽シュミット望遠鏡に搭載された広視野動画観測システム「トモエゴゼン」を利用した毎晩のサーベイ観測データから地球接近小惑星の探索を実施し、そこから検出された小惑星候補天体の追跡観測を行い、2019年~2022年6月までに42個の直径100m以下の微小小惑星の発見に成功したことを発表した。

近年、世界中の掃天(サーベイ)観測プロジェクトにより、地球に接近する軌道を持つ地球接近小惑星(太陽に最も近づく近日点距離が1.3天文単位以下の小惑星)が多数発見されるようになっている。

そうした地球接近小惑星は小惑星探査機がアクセスしやすいという利点を有し、日本の探査機はやぶさが探査したイトカワ、同じくはやぶさ2が探査したリュウグウも地球接近小惑星に含まれる。また地球接近小惑星は、地球軌道と交差するものもあり、衝突の可能性がゼロでない天体もある。そのような危険な天体をいち早く発見し、被害を防ぐという観点からも、地球接近小惑星は重要な観測対象と考えられている。

地球接近小惑星は地球に接近時に見かけ上明るくなるため、地球に近づくタイミングに観測することができれば、よりサイズの小さな小惑星(微小小惑星)を発見できる可能性も高くなる。そして、もし発見後の微小小惑星に対して迅速な追跡観測を実施することができれば、その小惑星の自転状態や組成の推定から、その起源を議論することも可能となるとされている。

しかし、小惑星が将来どこに存在するかという軌道の正確さを高めるには、同一の小惑星を複数回観測する必要があるものの、地球接近時の数時間から数日間しか観測することができないため、実際に観察することは容易ではないという。

また、地球に近づく時期には見かけの移動速度が大きくなっている、長時間の露光観測の場合、画像上で星像が伸びてしまい、検出感度が低下してしまうという課題もあることから、微小小惑星はそれこそ無数に存在すると推測されているものの、そのほとんどは未発見であり、自転状態や組成推定に成功した例は限られてしまっているという。