ispaceは7月20日、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1の打ち上げ時期を、最短で2022年11月に設定したことに加え、予定通りに進められているという現在の進捗状況と、新たに同プログラムに参画したサポーティングカンパニーについての発表を行った。

まず、2021年6月から組み立てを開始したランダー(月着陸船)のフライトモデルだが、2022年5月中に予定していた作業を完了したという。そして同年6月からは宇宙空間での稼働に向けた振動試験、熱真空試験、機能試験などの最終環境試験を実施しているとした。すべての試験は同年9月に完了の予定で、その後にランダーは打ち上げ予定地であるフロリダへ輸送される計画となっている。

  • ispaceのエンジニアがランダーのフライトモデルを組み立てている様子

    ispaceのエンジニアがランダーのフライトモデルを組み立てている様子 (C)ispace(出所:ispace Webサイト)

同時に、日本橋にミッションコントロールセンターが開設され、打ち上げ後のランダーの運用に備えるためにミッションで起こり得る課題を想定したシミュレーション訓練を実施しているともしている。

また、新たにサポーティングカンパニーとして、東レ・カーボンマジック(東レCM)が2022年5月に、横河電機が同年6月にプログラムに参画することで合意したという。

東レ・カーボンマジックは、レースという極限環境での開発で培われた最適化設計や軽量化技術を、ランダーや、月面を走行するローバー(月面探査車)などの別の極限環境である宇宙開発に応用することで、HAKUTO-Rプログラムにおいて、CFRP機体や部品開発のサポートを行っていくとしている。

一方の横河電機は、今回のプログラムを通して得られる知見を活かし、地球上の産業用に実績のある技術を用いて、水資源探査に有効な計測技術、水素バリューチェーンに必要な制御技術など、月面での経済活動に必要なインフラの実現に向けて開発を行っていく予定としている。

なお、今回のミッション1では、以下の7個のペイロードを輸送予定であることが発表されており、そのほかについても後日公開予定としている。

  • 日本特殊陶業の固体電池
  • UAEドバイの政府宇宙機関MBRSCの月面探査ローバー「Rashid」
  • JAXAの変形型月面ロボット
  • カナダ宇宙庁によるLEAPの1つに採択されたMCSS社製AI搭載フライトコンピューター
  • 同じくLEAPの1つに採択されたCanadensys社製カメラ
  • HAKUTOのクラウドファンディング支援者の姓名を刻印したパネル
  • ミッション1の発表済みの7つのペイロード一覧

    ミッション1の発表済みの7つのペイロード一覧とランダーのイメージ。今後、これら以外のペイロードも発表される予定 (C)ispace(出所:ispace Webサイト)

また、ミッション2に関しても搭載可能なペイロードはすでに決定しており、現在はミッション3以降のペイロードサービスに関してさまざまな交渉を行っているとしている。ミッション2の計画および搭載予定のペイロードについては後日公開予定としている。