タカラトミーは3月15日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同で開発した超小型変形型月面ロボットが、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」に搭載され月面でのデータ取得を行う計画であることを明らかにし、併せて自社公式Webサイトにて、実際に変形して走行する様子などを公開した。

この変形型月面ロボット(Lunar Excursion Vehicle 2:LEV-2)の愛称は「SORA-Q(ソラキュー)」で、直径約80mm、質量約250gの球形の超小型ロボット。2016年よりタカラトミーとJAXAが共同開発を開始、2019年にソニーグループが、2021年に同志社大学が加わり、4者でSLIMへの搭載に向けて開発が進められてきた。

  • 変形型月面ロボット「SORA-Q」

    変形型月面ロボット「SORA-Q」。左が変形前、右が変形後 (C)JAXA/タカラトミー/ソニー/同志社大学

月上空にてSLIM搭載機より分離され、月面着陸の後、球体から左右に広がる形で変形。外殻部分を車輪にして、左右の車輪を同じ高さで回転させて全身するバタフライ走行と、左右の車輪を別々の高さで回転させて前進するクロール走行の2種類の走行が可能。また、機体前後に2つのカメラを搭載しており、SLIMに搭載されるもう1つの月面探査機(Lunar Excursion Vehicle 1:LEV-1)とBluetoothで接続し、LEV-1経由で月表面の画像などを地球に送信することも計画されている。

主なミッションとしては、以下の5つが掲げられている。

  1. 月面に到達すること
  2. SLIM探査機から分離して月面に着陸すること
  3. 月面のレゴリス上を走行し、動作ログを取得、保存すること
  4. 着陸機周辺を撮影し、画像を保存すること
  5. 撮影した画像データ、走行ログ、ステータスをSLIM探査機とは独立した通信系で地上に送信すること

なお、「SORA-Q(ソラキュー)」という名前は、宇宙を意味する「宙(そら)」と、宇宙に対する「Question(問い)」「Quest(探求)」、「球体」であること、横からのシルエットが「Q」に似ていることなどから名付けたとしている。

SLIMミッションは、2022年度に打ち上げられる予定のH-IIAロケットに相乗りの形で実施され、打ち上げ後数か月をかけて月を目指すこととなる。

また、変形型月面ロボットは、 ispaceの月着陸機「HAKUTO-R」による月面輸送でも月に行く予定で、合計2回の月面探査が行われる予定となっている。

SORA-Qの月面でのミッションイメージ