米国を選ぶか中国を選ぶか、政府も苦悩する韓国

Samsungだけではなく、韓国政府も、米国を選ぶか中国を選ぶかの選択を迫られている模様である。

米国バイデン政権は、米国・日本・台湾・韓国による半導体サプライチェーン同盟「Chip4」の実務会議を開く予定があることを背景に、8月末までにこの同盟に参加するかしないか返事をするように韓国政府に返事を迫ってきたと、韓国の多数のメディアが伝えている。

韓国政府は米韓半導体協力の必要性は認めており、6月の米韓共同声明でもそのことを明記しながらも、Chip4に参加することには躊躇しているという。

もし韓国がChip4に参加することを表明した場合、半導体関連における米国の対中政策に協調するという意味に中国がとらえ、中国の反発から、現在の韓国の対中半導体貿易に悪影響を与える可能性が懸念されるためで、すでに中国は先手を打つ形で、中国外交部(日本の外務省に相当)蔵王善スポークスマンが7月19日の定例ブリーフィングにおいて、「米国は自由貿易原則を標榜しながら国家権力を乱用し、科学技術と経済貿易問題を政治化、道具化、武器化して脅迫外交をしようとしている」と米国を非難するコメントを出している。水面下で中国は、韓国に対してChip4に参加しないよう促しているという。

韓国の外交部報道官は「韓国は米国と多様な制度を通じて半導体協力を強化する方針を議論しているが、現在まで何も決定していない」と話しているほか、韓国の通商産業資源部(日本の経済産業省に相当)も同様の見解を示しており、対策を検討し始めたところだとするにとどめている。

韓国メディアによれば、日本と台湾はすでに米国主導の半導体協力に積極的に協力する意志を見せているとしており、韓国政府の出方が注目されるとしている。韓国半導体産業にとっても、半導体技術のコア部分や製造装置における米国企業への依存度は高く、米国からの提案を拒否することは難しいことから、米国に協力する姿勢をとりながらも中国の反発を最小化できる方策を模索している模様だという。

なお、韓国経済は、中国に対する依存度が高いうえに、SamsungもSK Hynixも中国に巨大な半導体工場を有していることもあり、中国政府を刺激して報復措置を受けることを恐れているという。TSMCも中国に半導体工場を有しているが、レガシープロセスを採用したもので、中国で先端プロセスを採用した工場を稼働させている韓国勢ほどには影響を受けない見込みである。

米国テキサス州における半導体工場新設に際し、米国政府からの補助金を期待しつつも、中国・西安のNAND製造を先端プロセスで行っていくために投資を続けたいSamsungにとっても、米国、中国双方とうまく付き合いたい韓国政府そのものにとっても、今後、米国を選ぶか、中国を選ぶかの二者択一をどちら側からも求められることになりかない状況となることを避ける方策はないものかと苦慮する状況が続きそうである。