電気自動車(EV)の電力性能のさらなる向上に向け、多くの自動車メーカーがSiCパワー半導体の採用を推進している。TrendForceの調査によると、2022年に10億7000万ドルと予想される車載SiCパワー半導体市場は、2026年には39億4000万ドルにまで拡大することが予測されるという。

  • 車載SiCパワー半導体市場規模の予測

    車載SiCパワー半導体市場規模の予測 (出所:TrendForce、2022年7月)

現在の車載SiCパワー半導体市場は、欧米の主要なIDMが存在感を発揮しているという。主要サプライヤは、STMicroelectronics、onsemi、Wolfspeed、Infineon Technologies、ロームで、これらのIDMはSiCパワー半導体分野の先駆者的立場にあり、主要な自動車・Tier1メーカーと緊密な関係を構築しているほか、これらの企業は、SiCウェハの供給不足を避けるべく、上流の基板材料分野への進出を強化しており、2021年にはonsemiが米GT Advanced Technologiesを買収している。

自動車メーカーもSiCに対する期待から、サプライチェーンの構築にも積極的に参加しており、世界最大のEV市場である中国に本社を構える上海汽車集団(SAIC Motor)や広州汽車(GAC)などもSiCサプライチェーン全体の展開を進めており、中国内サプライヤにとっての開発機会を提供しているほか、BYDや韓国の現代自動車などの自動車メーカーが独自チップの研究開発プログラムを開始するといった動きを見せている。

また、SiC電源コンポーネントの最大のポイントはその費用対効果であり、その向上のカギは上流の基板材料が握っていることから、さまざまな方法でコストの低減を図ろうとしている。たとえば、新しい結晶成長アプローチ(名古屋大学発ベンチャーのUJ-Crystalや中Jing Ge Ling Yu)や高効率ウェハ処理技術(Soitec、ディスコ、Infineon、中Lasic Semiconductor Technology)、Wolfspeedが積極的に進めている200mm(8インチ)化などが挙げられる。

なお、TrendForceによると、SiC材料技術の継続的な進歩と、チップ構造およびモジュールパッケージングプロセスの成熟により、自動車市場におけるSiCパワー半導体の普及率は継続して高まっていくことが予想され、それによりその採用範囲は、現在のハイエンド車両のみならず、ミドルレンジおよびローエンド車両へと広がりを見せ、自動車の電動化が加速していくとの見方を示している。