TrendForceによると、2022年の半導体ファウンドリの生産能力は前年比で約14%の増加となる見通しだという。ウェハ口径別に見ると、中古価格が上昇し、在庫も払底しているとも言われる8インチ(200mm)の生産能力拡張は費用対効果は高くないため、同6%増にとどまるが、アナログ/パワー系の移行も進みつつある12インチ(300mm)は同18%増と大きく伸びる見込みとしている。

また、これら12インチの新たな生産能力をプロセス別で見ると、28nm以上のマチュア(成熟)プロセスが約65%で、その成長率は同20%増と高い。生産能力の増強を図っている主なファウンドリとしては、TSMC、UMC、SMIC、中HuaHong GroupのHHGrace、および中Nexchipなどだという。

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    ファウンドリにおける成熟プロセス(28nm以上)と先端プロセス(1X-nmおよびそれ以下)の比率の2021年実績と2022年以降の予想 (出所:TrendForce)

28nm以上のプロセスは主に特殊プロセスの生産能力拡充に焦点を合わせているため、TrendForceでは、電力関連、マイコン、AMOLEDドライバICなどの製品動向に基づいて、これら特殊プロセスの最近の傾向を以下のように分析している。

パワー半導体

パワー半導体は、パワーディスクリートとパワーICの2つのカテゴリに大別される。MOSFETやIGBTなどのパワートランジスタを主流製品とするパワーディスクリートは、5Gインフラストラクチャ、消費者向け急速充電、自動車用電子機器、電気自動車向けの需要が増している。市場は、Infineon Technologies、onsemi、STMicroelectronicsなどといったグローバルIDMが市場の80~90%ほどを握っており、残りがファブレスといった構図となっている。ファブレスは、既存顧客からの需要の増加に加えて、ファブ拡張を躊躇するIDMもファウンドリに製品を継続的にアウトソーシングしており、存在感を徐々に増しつつあるという。ファウンドリの動向としては、2021年にHHGraceは、パワーディスクリートの増産を目的に無錫に12インチラインを追加したほか、Powerchip Semiconductor(PSMC)やVanguardも最近、注文の増加に対処するため、8インチの生産能力を増加させている。

電源管理IC(PMIC)

PMICは、BCD(Bipolar-CMOS-DMOS)プロセスが主に採用されており、主流は8インチで0.18〜0.11μmプロセスとなっている。5Gスマートフォン(スマホ)、データセンター、電気自動車などでの需要を背景に、その需要は近年増加している。ただし、8インチの生産能力の伸びは限られており、SoCの新規リリースに応じて周辺ICを更新する必要があるため、TSMC、UMC、PSMC、HHGrace、SMICといったファウンドリは、特定のPMICを12インチの生産に移行して、スマホやサーバーなどに向けたPMICの90/55nmプロセスへの移行を進めているという。

組み込み不揮発性メモリ(eNVM)

eNVM(組み込み不揮発性メモリ)プロセスは比較的多様であり、現在eFlashが主流となっている。アプリケーションとしては、主にスマートカードやマイコンに適用されており、中でもマイコンは情報通信製品、家電製品、IoT製品、産業/車載など幅広い用途で用いられている。現在、民生用マイコン市場は需要が低迷気味だが、産業機器/車載機器は需要が旺盛で、供給が不足気味となっている。

さらに、IDMの場合、新型コロナのパンデミックによるサプライチェーンの短期的な影響と、中長期的な微細プロセスノードへの移行、特に40nmを切るようなプロセスへの移行に伴うコストが、自社製造の方がファウンドリへの受託製造に比べて高くつくため、アウトソーシングの割合を増やす傾向にある。これによりファウンドリの成長が促進されることとなっており、SMICやHHGraceはTSMCよりもプロセス的には遅れがあるものの、HHGraceは中国のファウンドリの中で最大のマイコン生産能力を提供する立場に躍り出ている。

高電圧(HV)プロセス

HV(高電圧)プロセス技術は、主にディスプレイドライバICの製造に使用されている。現在の主流は、8インチ0.18~0.11μmプロセスでの大型/小型ドライバICの生産、12インチ65/55nmプロセスでのTDDIの生産、40/28nmプロセスでのスマホ用AMOLEDドライバICの生産である。2022年初頭以降、スマホと家電市況は低迷しており、大型ドライバICとTDDIの供給バランスは取れているものの、スマホにおけるAMOLEDの全体的な普及率は着実に上昇しているため、AMOLEDドライバICは中長期的に成長が続くことが見込まれるとしている。Samsung、TSMC、UMC、およびSMICはいずれも28nm HVプロセスを開発する計画を持っているという。