台湾DRAMメーカー最大手のNanya Technology(南亜科技)は6月23日、3000億NTドル(約1兆3600億円)を投資して、EUVリソグラフィを採用した独自開発の10nm台の先端製造プロセス技術を採用した12インチDRAM工場を新北市泰山区の南林科技園区で着工したことを明らかにした。起工式には、多数の政府要人とともに蔡英文総統が出席し、祝辞を述べた。
これまでNanyaは、40~20nm DRAMプロセスをMicron Technologyより高額なライセンス料を払って導入していたが、10nm台の先端プロセスは自社開発に切り替えた。これに関して、蔡総統は、「台湾プラスチックグループ(Nanyaのオーナー)が台湾のハイテク産業であるDRAM技術の自立に向けて、独立した研究開発能力を強化することは重要である。Nanyaの新工場着工により、台湾の半導体産業がさらに発展する」と述べたほか、「2021年の台湾での半導体生産額は全体で4.1兆NTドル(約18兆6000億円)に達し、25万人近い雇用を抱えるなど、台湾の経済全体に多大な貢献をしている。台湾政府はハイテク人材を体系的かつ計画的に育成しており、台湾をアジアの「半導体先端プロセスセンター」とし、世界の産業チェーンにおけるその地位のさらなる強化を図っていきたい」としている。
Nanyaの新ファブは、「メインファブ」のほかに「R&Dセンター」、「水資源再生センター」そしてEUV露光装置を備えた独立したEUV棟も含まれる。EUV露光は、1A-nm、1B-nm、1C-nmの次の1D-nmプロセス(他社では1α-nmあるいは1A-nmと呼ばれる)から採用するという。投資計画は3つのフェーズを経て、最終的に月産約4万5000枚を目指すという。推定年間生産額は700億NTドル(約3100億円)としており、生産開始は2025年を予定。稼働すれば、新たに3000人のハイテク雇用を創出する予定であるとするほか、生産ラインには人工知能(AI)を活用したスマート製造技術を導入し、生産効率の向上を図るという。
また、Nanyaの呉嘉昭・董事長は、10nm台の第1世代となる1A-nmプロセス製品について、2022年下半期中にも量産を開始する予定と説明しているほか、第2世代の1B-nmプロセス製品に試験生産に入っており、第3世代以降の1C-nmプロセスと、EUV露光技術を導入する1D-nmプロセス製品は研究開発段階だとしている。さらに、過去5年で研究開発費を3倍に、研究開発の人員を1000人規模に増やし、DRAMの重要技術の開発を進めており、世界の特許数は5000件以上に上るともしている。
加えて、李培瑛総経理は、「ロシアのウクライナ侵攻やインフレで消費者の購買意欲が低下し、第3四半期は市況が低迷しDRAM価格は下落し続け、市場の回復は2023年まで待つ必要がある」との予測を示す一方、長期的に見ればクラウド、サーバ、人工知能(AI)、自動運転車、5G、IoTなどでの需要が続き、DRAM市場の規模は年率15~20%ほどの成長が続くとの見方を示している。