千葉工業大学(千葉工大)、岡山理科大学、大阪大学(阪大)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大学、高知大学、広島大学の7者は、隕石が母天体上で過去に経験した天体衝突の証拠である「衝撃変成組織」を、従来にない効率良くデータ蓄積を可能にする新たな実験手法を開発して詳細に調べた結果、3万気圧を超える衝撃圧力が加わった場合、隕石中の水質変成を受けた鉱物である「方解石(炭酸カルシウム)」粒子の大部分が、「波状消光」と呼ばれる不均質な光学的特徴を示すことを発見したと発表した。
同成果は、千葉工大 惑星探査研究センターの黒澤耕介上席研究員、岡山理科大 理学部基礎理学科の新原隆史准教授、阪大大学院 理学研究科の近藤忠教授、JAMSTEC 高知コア研究所の富岡尚敬主任研究員、東大 総合研究博物館の三河内岳教授、高知大 海洋コア総合研究センターの佐野有司特任教授/センター長、広島大大学院 先進理工系科学研究科の小池みずほ助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国地球物理学連合が刊行する惑星科学全般を扱う学術誌「Journal of Geophysical Research Planets」に掲載された。
隕石の多くは、歪んだ鉱物組織の「衝撃変成組織」を含んでおり、その隕石がもととなる母天体上で過去に経験した天体衝突の証拠とされている。これは、天体衝突の条件と生成される衝撃変成組織の関係が明らかであれば、衝撃変成組織から過去の太陽系でどのような天体衝突が起きていたのか、その動的な姿を蘇らせることが可能となることを意味するが、そのためには衝撃変成組織を読み解くための「辞書」のような存在が必要とされている。
はやぶさ2のサンプルリターンの分析から、小惑星リュウグウの岩石は水と有機物を多く含む炭素質隕石に近く、過去に鉱物と水の反応(水質変成)を受けていることがわかってきており、例えば水質変成の結果として生成される鉱物の1つに方解石(炭酸カルシウム)があり、リュウグウ試料中に同鉱物が含まれていたことが報告されている。
しかし、水質変成を受けた鉱物の衝撃変成組織については、これまであまり調べられてこなかったという。方解石の衝撃変成については、極めて弱い衝撃(5000気圧未満)もしくは非常に強い衝撃(20万気圧)についてのみが知られていたが、方解石についての辞書の記載を完成させるには、その中間の衝撃データを取得することが求めらえれていたとする。
これまで衝撃変成組織を調べる実験手法は3種類提案されているが、そのいずれも課題があり、時間的にも費用的にもコストが高く、多くの実験データを短期間で取得することが困難だったという。
そこで研究チームは今回、先行研究の弱点を克服し、効率のよいデータ蓄積を可能にする新しい実験手法を開発することにしたという。