中性子は通常、超新星爆発の残骸として形成される。その中性子が連星系を形成している場合、伴星の物質を強い重力で奪い取って自身に降着させることで、徐々に自転速度が加速。長い時間の果てに、1~10ミリ秒というとてつもない周期にまでスピンアップすることで、ミリ秒パルサーが誕生するという「リサイクル」シナリオが考えられている。

超新星爆発はきれいに球対称に爆発するイメージがあるが、実際には球対称には爆発しないため、リサイクルシナリオの場合は運動量保存から中性子星が大きな速度を持つことになり、今回の場合なら銀河中心領域から飛び出してしまうとする。

それに対し、銀河中心領域から飛び出さないミリ秒パルサーの誕生シナリオもある。研究チームが今回注目したもう1つのシナリオがそれで、太陽質量のおよそ8倍以下の小さい星の終焉で誕生する白色矮星と伴星の連星系からミリ秒パルサーが形成されるというものだという。

同シナリオでは、白色矮星が伴星から質量を奪い取って降着が起こり、その質量が太陽の約1.4倍のチャンドラセカール限界に達すると重力崩壊を起こして中性子星になるというもので、「降着誘発崩壊」(AIC)と呼ばれる(白色矮星がチャンドラセカール限界を超えると、Ia型超新星爆発を起こす場合もある)。ミリ秒パルサーがAICで形成されるより詳細なシナリオは以下の通りだとする。

  1. 連星系の誕生から4400万年後。主系列星の膨張にともなうロッシュ・ローブ・オーバーフローと、副系列星の安定した物質降着という、スターバースト後の最初の相互作用が発生
  2. 5400万年後。主星は主系列の二次星に質量を提供しながら進化
  3. その後、連星軌道が縮小し、主星がGiant Branch Naked Helium星となり、酸素/ネオン白色矮星に進化する段階を経る
  4. 8300万年後。主星がさらに2000万年かけて質量を増やし続け、炭素・酸素系白色矮星に進化
  5. 1億800万年後。重力放射によってスパイラル状に接近しながら、これまで休眠状態
  6. 1億900万年後。酸素・ネオン白色矮星は炭素・酸素白色矮星から質量を吸収し、酸素/ネオン白色矮星は回転支持白色矮星のチャンドラセカール限界に近づくと、降着崩壊を起こして中性子星となる。その後、中性子星は炭素・酸素白色矮星からの質量の吸収を開始
  • 降着による白色矮星の崩壊に向かう、あるいはそれを超える主な進化段階

    降着による白色矮星の崩壊に向かう、あるいはそれを超える主な進化段階 (C)Oscar Macias et al./Kavli IPMU(出所:Kavli IPMU Webサイト)

なお、AICでは超新星爆発を伴わないため、誕生した中性子星は大きな速度を持つことはなく、銀河中心領域にとどまることが推測されるという。

また同シナリオは、現在知られている約300個のミリ秒パルサーのうちのおよそ半数が、球状星団内で発見されているという事実とも合致しているとする。逆に、超新星爆発でできたミリ秒パルサーの場合は、それらは球状星団から飛び出してしまうと考えられるという。

研究チームに寄れば、今回作成された新しいモデルでは、ミリ秒パルサーの集団からのガンマ線放出を足し上げることで、銀河中心からの過剰なガンマ線放出の全強度とそのエネルギースペクトルの両方を説明できるとしている。

また、今回の研究成果から、天の川銀河中心部に新たな天体物理学的天体が存在する証拠が得られたことになり、天の川銀河の星形成史に光を当てることができると研究チームでは説明しているほか、ミリ秒パルサーは、アンドロメダ銀河からのガンマ線信号など、高エネルギー天体物理学のほかの未解決問題も解明できる可能性があるとしている。