2022年5月のTop500の発表では、米国のFrontierが1.102EFlopsを達成し、日本の富岳を抜いて1位になった。しかし、富岳は0.442EFlopsで2位をキープし、中国の太湖之光も0.0946EFlopsで6位をキープしている。米国のAuroraは遅延との噂が流れているが、El Capitanは予定通りに出てくると思われる。となると、その次に向けて日本と中国がどう出るのかが興味の的である。

それについて、5月29日から6月2日に掛けてドイツのフランクフルトで開催されたISC 2022で、日本の富岳スパコンを持つ理研コンピューティングセンターの松岡所長と、中国の中山大学のYutong Lu教授がアジアのスパコンの状況を報告する発表の中で、言及が行われた。Yutong Lu教授はTop500 9位の天河2Aスパコンが設置されている広州市の国家スパコンセンターのディレクタを務める中国スパコン界のキーパーソンである。

富岳の次のスパコンに向けた研究を2022年8月より開始

松岡センター長の発表スライドを次に示す。松岡先生は、次期マシンを「FugakuNext」と呼び、時期は2029年と書いている。

そして、FugakuNextは京コンピュータから富岳への性能アップと同じクラスの性能向上を目標とすると述べた。ただし、これは容易ではなく、多くの研究開発とソフトウェア、ハードウェアとのコデザインを必要すると見ている。

松岡所長は、マトリックスエンジンは多くのHPC計算にはあまり有効ではなく、各種のドメインスペシフィックなアクセラレータは演算性能を改善しても、他の性能のボトルネックが目立ってくるというように、HPCには不十分であると考えている。Gustafsonの法則が示すように、問題のサイズが大きくなると、性能の上限は大きくなる。このようなメリットをうまく利用できるスケーリングを利用しなければならない。高バンド幅と強スケーリングの実現が重要で、将来の計算アルゴリズムとハードウェアはこれを実現するようにコデザインを行って行くべきであるという。松岡所長は、このようなアーキテクチャの研究を2022年の8月から開始すると述べた。

  • 理研の松岡センター長と2029年のFugakuNEXTの説明スライド

    理研の松岡センター長と2029年のFugakuNEXTの説明スライド (出所:ISC 2022における理研の松岡センター長の発表資料)