AMDがMetaに通信ソリューションを提供

米AMDは米国時間の5月11日、4G/5G向けのRadio Access Network Solutionとして「Evenstar Program」に協力する事を発表したので、その内容をお届けしたい。

Evenstar ProgramはMetaの子会社であるMeta connectivityが進めている、OpenRANベースのイニシアチブである。

ご存じの通りOpenRANは、複数のベンダーで共通のRAN(Radio Area Network)を策定する事で、マルチベンダー環境での構築を可能にしよう、という話である。OpenRANにも色々あるが、現時点で一番勢力が大きいのはO-RAN Allianceであるが、実はこのO-RAN AllianceにMetaは参加しておらず、独自にOpenRANベースのシステムを構築しようとしており、それがEvenstar Programである。

Evenstarの構成

Evenstar Programでは、RRU(Remote Radio Unit)とDU(Distributed Unit)、CU(Centralized Unit)がそれぞれ別のベンダーによって提供される事が普通になり、さらに将来的にはDUとCUが一体化するなどフレキシビリティに富んだ構成が可能になり得るとする(Photo01)。

  • Metaの目指すソリューション

    Photo01:左が従来の特定ベンダーによるソリューション、右がMetaの目指すソリューションである。CUがvCU(virtual CU)になっているのは、もうこの辺は半ばEdge Datacenterに集約されているからという話でもある

もっとも独自にO-RAN Allianceを別に無視するわけではなく、ここ(Photo02)にもある様にO-RAN Specificationともすり合わせをする事を明示しているが、O-RAN Specificationそのものを使うと自由度が大きすぎると思ったのだろうか? O-RAN Allianceはメンバー数が多い分、相対的に意思決定までの時間がやや長くなりつつある傾向が見えるので、O-RAN Allianceの決定は尊重しつつも、意思決定を迅速に行う事を優先したようだ。まぁMetaの規模と資金力があれば、自前でプラットフォームを構築する事そのものは難しくないだろうからだ。

  • Evenstar Programのメリット

    Photo02:メリットそのものは別にO-RAN Allianceが掲げている事と差が無い

さて一方のAMDというか旧Xilinxであるが、こちらはそれこそ2Gや3Gの時代から基地局向けのソリューションを提供しており、5Gに関してもすでにZynq RFSoCやVersalでさまざまなソリューションをリリースしている(Photo03)。

  • Embedded CPUとしてEPYCが入ってくる

    Photo03:右半分はこれまでも出て来ている話だが、左側でVirtual RAN向けのアクセラレータはともかく、Embedded CPUとしてEPYCが入っている辺りが目新しい

古いところでは2019年のZynq Ultrascale+ RFSoCや2020年のZynq RFSoC DFEなどがあり、今後Versal AI RFシリーズが投入される予定であることが明らかにされている。これらはいずれもXilinx時代のものだが、AMDの買収後もこれらが変わったという話は特にない。今回の発表はその延長にあるもので、Zynq Ultrascale+ RFSoCにMetaのEvenstarのRU向けソリューションを提供するという話である(Photo04)。

  • ハードウェアそのものはZynq Ultrascale+ RFSoCそのまま

    Photo04:ハードウェアそのものはZynq Ultrascale+ RFSoCそのままであり、その上にEvenstar向けのIPを提供する、という話である

余談だが、MetaのEvenstar Programに参加するのは別にAMD(というかXilinx)だけではない。例えば2021年3月にはMarvellがOCTEON DPUをEvenstar ProgramのDU向けにリリースする事を発表している