市場調査会社のIC Insightsによると、2021年の半導体企業による研究開発費の合計額は前年比13%増の714億ドルとなり過去最高を更新したという。また、2022年も同9%増の805億ドルとなり、過去最高を更新する見込みであるともしているほか、2022年から2026年の年平均成長率(CAGR)は5.5%で推移し、2026年には1086億ドルと1000億ドルの大台を突破するとも予測している。

  • 半導体業界の研究開発費総額

    半導体業界の研究開発費総額(単位:10億ドル)とR&D費用/売上高比率の推移 (出所:IC insights)

2020年、新型コロナのパンデミックが生じた中にあっても半導体業界は成長を果たし、2021年も成長を果たした一方で、半導体企業は総売上高に占める研究開発費の割合を2019年の15.1%に対して、2020年は14.5%に、2021年には13.1%まで減らしているという。

1980年代より始まった過去40年間にわたる同社の市場調査期間中、半導体企業の研究開発費合計額が前年比でマイナス成長となったのは、メモリバブルが崩壊した2019年が同1%減、その前はリーマンショックの影響を受けた2009年に同10%減、ドットコムバブル崩壊の影響を受けた2001年に同10%減、同じく2002年に同1%減の4回だけだという。

また、リーマンショックの影響で世界的な景気後退から回復が進んだ2010年には半導体研究開発費合計額も回復したが、その後は、伸びはするものの、経済の不確実性や歴史的な企業買収の波などが起こり、その勢いは減速傾向となっているともする。

2000年以降の研究開発費の前年比成長率平均は14.5%で、2000年、2010年、2017年、2018年、2020年の5つの年以外はこの成長率を上回る伸びを見せたが、この5つの年で研究開発費/売上高の比率が低下している。ただし、これは半導体企業が研究開発費を抑制したというよりも、売り上げが大きく伸びた結果としている。

2021年の半導体企業の研究開発費トップはIntelで、全体の19%を占めたという。その額は前年比12%増の152億ドルで過去最高だという。2019年の同1%減、2020年の同1%増という動きに対し、Pat Gelsinger CEOによる微細プロセスの確立による主導権を取り戻したいという意欲の表れとも受け取れる。

2位はSamsung Electronicsで2021年の研究開発費用は同13%増の推定65億ドル。最先端ロジックプロセスとなる5nm以下への支出を加速させたという。同じく最先端ロジックプロセスで競合するTSMCも、2020年の同26%増に続き、2021年も同20%増の約45億ドルと支出を増やしている。

同社の2021年のR&Dランキング(未公開)によると、2020年に19社だった研究開発費10億ドル超え企業の数は2021年に21社に増加したという。また、R&Dランキングトップ10社の研究開発費合計額は、前年比18%増の526億ドルとなり、全世界の半導体企業の研究開発費総額の65%に相当するとしているほか、そのR&D費/売上高比率は、2020年の14.5%に対して2021年には13.5%となったという。