NECは4月28日、2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の通期決算説明会をオンラインで開催した。2021年度の売上収益は、前年度比0.7%増の3兆141億円だった。グローバル事業やエンタープライズ事業の業績が想定を上回ったことにより、年間業績予想に比べて売上収益は増加した。

  • 2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日、2022年3月期)通期の決算サマリー

売上収益の増加により、営業利益および調整後営業利益も前回予想に比べ改善。営業利益は1325億円の黒字(前年度比212億円減)、調整後営業利益は1710億円の黒字(同72億円減)となった。

営業利益の改善に加え、税金費用の減少により、前回予想に比べて当期利益および調整後当期利益も改善し、当期利益は1413億円の黒字(前年度比83億円減)、調整後当期利益は1672億円の黒字(同18億円増)となった。調整後当期利益は3期連続で増益だ。フリーキャッシュフローは、841億円の収入(同683億減)だった。

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏は、「前年度のGIGAスクール特需の反動減や部材不足のマイナス影響があったものの、5G(第5世代移動通信システム)基地局の出荷拡大、またコアDX事業におけるアビームコンサルティング連携による大型案件獲得など、成長事業の拡大により増収となった」と説明した。

  • NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田隆之氏

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調整後営業利益の減益要因について、2021年度は前年度比で戦略的費用が260億円増加し、部材不足の影響(80億円)や社会基盤セグメントでの不採算案件(17億円)といった減益要因があった。一方、ディスプレイ事業の非連結化やAvaloqの新規連結といったポートフォリオの変化(130億円)や、オペレーションの改善(315億円)が増益要因となった。

  • 調整後営業利益の増減要因(前年度比、第3四半期累計)

戦略的費用は、グローバル5G、コアDX、ビジネスインフラなどの成長事業のほか、人材投資やベース事業、構造改革のために投下した。2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日、2023年3月期)以降は、現在の水準をベースとして、費用を増加させる場合は利益改善範囲内での費用投入とし、業績悪化とならないよう管理していくという。

2021年度の受注動向は、全社で4%の増加(大型案件により四半期ごとに変動が大きい海洋、非連結となったディスプレイを除く)となった。ITサービス領域では、エンタープライズを中心に堅調に推移し、3%の増加となった。

セグメント別では、「エンタープライズ」はすべてのセグメントが堅調で、7%の増加となった。「ネットワークサービス」は5G基地局が大きく拡大した一方、固定系大型案件の反動減があり1%減。「グローバル」は、Avaloqの連結が寄与したほか、DG/DF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)の受注好調により25%の増加となった。

  • セグメント別の受注動向

NECは2022年度の業績予想からNon-GAAPベースによる開示に切り替える。「2025中期経営計画」の達成に向けて、NECはM&Aを重要視しており、調整項目であるPPA償却費を除いたNon-GAAPを、本源的な収益力を測る指標とするという。

2022年度の業績は、売上収益はグローバル5GおよびコアDXの拡大により3.8%の増収を見込む。売上拡大による増益、特に成長事業、ベース事業両方のオペレーション改善による310億円の増益を織り込んでおり、調整後営業利益は1850億円を計画している。

  • 2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日、2023年3月期)の通期業績予想サマリー

「まずは2022年度の利益計画を確実に達成し、そのうえで追加的な事業を獲得、リスクマネジメントを適切に実行することで上乗せも図っていきたい。部材不足による営業損益へのマイナス影響が290億円となったが、代替部材への設計移行や代替品への切り替え、販売価格の適正化、不要不急な費用の抑制などの対策により、その影響を80億円までに抑えた。2022年度は従来の対策を継続して実行し、地政学リスクに対して各国のレギュレーションを遵守しつつ対応していく」(森田氏)

NECは「2025中期経営計画」で、売上収益3兆5000億円、調整後営業利益3000を目標としている。成長事業に注力するほか、一部事業の縮小判断やリソースシフトを含む事業構造の最適化など、低収益な課題事業の改善を実施して目標達成を計画している。

  • 2025中期経営計画の目標

成長事業のうち、DG/DFではAvaloq、KMD、SWS 日本市場を含むグローバルでの事業拡大を図る。オフショア拠点の集約など開発の効率化も進め、さらなる利益率の向上を図る。森田氏は、「2022年度は減収・増益の予想だが、これはKMD、Avaloqの低収益事業の売却の影響によるものだ。コア領域については堅調に推移すると見ている」と述べた。

グローバル5Gについては、引き続き国内向けの売上増を見込む。受注済みの海外商用案件が着実に実行されることで、1100億円の売上を計画している。2021年度と同水準の戦略的費用を投入する予想だが、調整後営業利益は80億減に留まる予想だ(2021年度は206億円減)。

コアDXは、2021年度に引き続き、成長のための費用投下を予定しているものの増収増益を見込む。2021年度はクラウド事業での競争優位性獲得に向けてハイパースケーラーとの協業を進めたが、2022年度もそうした企業との戦略パートナーシッププログラムを拡充する。また、コアDX事業の共通基盤「DXオファリング」の開発強化とメニュー拡充、自社のDX人材の育成・獲得も進める。