ロシアのウクライナ侵攻に世界の注目が集まっている中、中国の上海では新型コロナの感染拡大封じ込めを目的とした都市封鎖が行われており、その期間もすでに3週間を超えるものの、感染拡大が中国全土に広がりを見せている。そのため、半導体はじめ電子産業の生産に支障が出始めており、半導体の需要減退に伴うメモリ価格の下落が生じ、メモリに強みを持つ韓国の半導体企業にも影響が出始めていると韓国の複数メディアが報じている。

2022年4月18日に中国国家統計局が発表した統計によると、2021年第1四半期の中国国内の半導体集積回路(IC)生産数量は前年同期比4.2%減の807億個にとどまった。四半期ごとの半導体生産量が減少したのは、2019年第1四半期(前年同期比8.7%減)以来3年ぶりとなる。特に2022年3月のIC生産数量は前年同月比5.1%減となり、1~2月の同1.2%減よりも大きくなった。3月末から始まった上海の都市封鎖の余波で、4月の半導体生産量はさらに大きく減少する見込みだという。

また、中国の自動車生産も3月は前年同月比4.9%減の240万台にとどまる結果となっている。中国自動車メーカー各社はサプライチェーンの崩壊により一部の車載半導体や部品の入手が困難となり、上海の都市封鎖が続けば、自動車メーカーは5月にも生産中断を余儀なくされる可能性が高いという。Huaweiのインテリジェント車両・消費者部門の責任者は、「上海の生産施設が早急に操業を再開しなければ、5月以降、科学技術と工業分野のすべてのサプライチェーンの稼働が中断される」との懸念を示しているという。

中国政府は、上海、昆山、深センに続き、先週は江蘇省蘇州、山西省西安、河南省鄭州などで都市の全面・部分封鎖命令を下した。西安にはSamsung ElectronicsのNAND工場があるほか、鄭州にはApple iPoneを生産するFoxconnがあるなど、封鎖された都市のほとんどに主要企業の生産施設が存在している。iPhoneを生産する台湾のペガトロンも上海に続き昆山など中国工場の稼動を中断している模様である。

Samsungによると、まだ西安のNAND工場はシャットダウンに至っておらず大きな影響はないが、中国のPC部品供給網に問題が生じノートブックPCの生産に一部支障が生じているという。すでに同社は資材供給遅延でノートブックPCの生産に支障が生じており、一部の企業顧客にノートブックPCの生産遅延と納品延期などを案内したという。

台湾の市場調査会社であるTrendForceのメモリ価格調査部門であるDRAMeXchangeによると、先週のPC用DRAM(DDR4 8Gビット基準)のスポット価格は、前週比で1.44%下落し、7週連続で下落し、価格の下落幅も徐々に大きくなっている。

キオクシアの汚染材料使用による生産支障(2022年1月下旬~2月下旬)にともなう供給不足で上昇が続いていたNANDのスポット価格(MCL64Gビット基準)の上昇も止まり、一部のNAND製品も下落傾向に転じているという。

中国の主要都市の封鎖が予想より長引いていることで、自動車、PC、スマートフォン、サーバなど、半導体が使われる全領域での最終製品の出荷が影響を受ける状況となっており、半導体供給支障の懸念から在庫備蓄に向けた注文は続いているものの、消費者の需要は鈍化してきているという。