シリコン結晶・ウェハメーカーである韓SK Siltronは、同社取締役会にて本社工場がある韓国の亀尾第3国家産業団地内に今後3年間にわたって1兆495億ウォン(約1000億円)を投じて新たな300mmウェハ製造工場(バルク結晶成長、エピタキシャル成長、ウェハ加工・検査)を建設することを承認した。

新工場の敷地面積は、4万2716平方メートルで、2022年上半期に着工し、2024年前半よりウェハ製造を開始する予定としているほか、ウェハ加工工程では、FOUP自動搬送システムを採用するとしている。

  • SK Siltron

    韓国・亀尾にあるSK Siltron本社工場。左上の建物が300mm結晶引き上げ・ウェハ加工工場、左隣がエピタキシャル成長工場、手前が純水プラントやエネルギー棟 (出所:SK Siltron)

  • SK Siltron

    既存300mmシリコン結晶工場の自動化されたウェハ加工工程 (出所:SK Siltron)

同社の大口顧客であるグループ会社のSK Hynixのほか、Samsung Electronics、キオクシア、TSMC、Intel、Micron Technologyなどの顧客が一斉に増産に動いており、ウェハの供給が不足気味な中、今後も世界的に需要が伸びることが予想されることから、工場の新設を決定した模様である。

シリコンウェハ業界は、トップが信越半導体、2位がSUMCO、3位がGlobalWafers、4位が独Siltronic、5位がSK Siltronだが、GlobalWafersがSiltronicの買収を失敗したことで、今後、激しい3位争いを繰り広げられることになりそうである。

米国のSiCウェハ製造子会社でも新工場を建設へ

SK Siltronは、電気自動車(EV)向けパワー半導体として成長が期待されるSiCウェハへ参入するため、米DuPontの子会社DuPont Electronics and ImagingのSiCウェハ製造事業を4億5000億ドルで2020年に買収。その後、2021年から3年にわたり総額3億ドル(345億円)を投じて、米国ミシガン州にある既存施設の近くでクリーンルームの増築を進めている。欧米の半導体企業がEV向け車載SiCパワー半導体の増産を進めており、SiCウェハの需要が急増していることに対処するためだという。そのため、買収当時の従業員数は50人程度だったものが、現在は150人にまで増加し、今後300人まで増やすことにしているという。

ちなみに韓国政府のYeoHan-koo貿易大臣と米国通商代表のKatherine Tai氏が、Sk Siltron CEOであるYong-ho Jang氏とともに、2022年3月16日にミシガンのSK Siltron SiCウェハ工場を訪問している。米韓自由貿易協定制定10周年行事の一環ということだが、同工場が、韓国企業の米国進出の象徴的な役割を演じているようだ。SK Siltron CEOは、これに併せてSiCウェハの大口径(8インチ)化の計画について現地担当者と打ち合わせたものと韓国半導体業界関係者は見ている。

なお、SK SiltronのSiCへの参入は、SKグループを率いる持株会社SK Holdingsの車載事業強化の方針に基づくものである。SKグループのSK Innovationは、フォードとバッテリー合弁会社を設立するとともにジョージア州に26億ドルを投じてフォードとフォルクスワーゲン向けバッテリ工場を建設するなど、SKグループ全体で米国での車載ビジネスを成長の柱に据えているようである。