オムロンは、3月9日から12日まで東京ビッグサイトで開催中の「2022国際ロボット展」で、同社の独自コンセプト「i-Automation!-Next」で掲げられた「人を超える自動化」「人と機械の高度協調」「デジタルエンジニアリング革新」を表すデモを紹介している。

オムロンは2016年より“イノベーションでモノづくり現場の課題を解決する”という独自コンセプト「i-Automation!」に取り組んできた。i-Automation!は、モノづくり現場でイノベーションを起こすというコンセプトのもと立ち上げられ、オムロンが持つ20万種類以上の製品群と「integrated(制御進化)」「intelligent(知能化)」「interactive(人と機械の新しい協調)」という3つの“i”を活用したソリューションの開発に取り組んできたといい、このi-Automation!のコンセプトのもとに230個以上のアプリケーション開発を行ってきたという。

そして、2022年1月12日に、今後5年を見据えてi-Automation!を進化させた「i-Automation!-Next」を発表。i-Automation!-Nextは、今まで培ってきた3つの“i”の視点をより強化・融合させた「人を超える自動化」「人と機械の高度協調」「デジタルエンジニアリング革新」という3つの方向性を掲げていく方針を示していた。

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今回の2022国際ロボット展では、i-Automation!-Nextで掲げられた3つの方針を具現化したデモを見ることができる。

従来は人にしかできなかった作業も自動化する「人を超える自動化」のデモ

人を超える自動化をコンセプトに作ったデモでは、部品検査、組み立て、完成品検査、完成品搬送まですべてを自動化し、従来は人にしか出来なかった作業も自動化を実現しており、その作業の1つがフレキシブル基板の挿入だ。

  • 人を超える自動化がコンセプトのデモ

    人を超える自動化がコンセプトのデモ

フレキシブル基板は柔らかく、薄いため、ロボットが作業を行うとバラつきが出てしまうなど自動化が難しいとされていた。そこで同社は、ロボットがある一定の場所をつかむように固定化することで、バラつきを抑える手法を取り入れたという。

「なんだそんなことか」と思われるかもしれないが、従来、カメラとロボットでコントローラが異なっているために、カメラで認識した位置と実際につかむ位置がズレてしまうという問題点があったのだ。

その問題点のブレイクスルーとなったのが、同社が2020年に発表した「ロボット統合コントローラ」だという。同製品は、従来はロボットや制御機器ごとに異なっていたコントローラを1台に統合できるようにしたものだ。

ロボット統合コントローラで、カメラとロボットを1台で制御することで、ズレがなく、生産現場で活用できるスピードでのフレキシブル基板の挿入が可能となったという。

  • 上部に設置されているカメラで掴む位置を認識する

    上部に設置されているカメラで掴む位置を認識する

  • ロボットがフレキ基板を挿入している場面

    ロボットがフレキシブル基板を挿入している場面

また、従来、人が行っていた装置の点検をモバイルマニピュレーターを用いて行う「リモート監視」のデモも行っていた。

  • モバイルマニピュレータが機械の計測器をのぞき込むような形で撮影する

    モバイルマニピュレータが機械の計測器をのぞき込むような形で撮影する

  • 管理者には計測器の画像が送付されてくる。

    管理者には計測器の画像が送付されてくる。現場に駆け付けなくとも機器の状態を知ることができるという

協働を実現した「人と機械の高度協調」のデモ

人と機械の高度協調のデモでは、人と機械のシームレスな連携が示されている。

人の判断がいらない単純作業をロボットが担い、その横で人が作業を行っている。

人の作業が適切に行われなかった場合、ロボットが作動しないことでミスを人に伝えたり、人がロボットに近づくとロボットの動きが緩やかになり、近づきすぎると止まるなど協働を実現したデモとなっているという。

  • 人と機械の高度協調のデモ

    人と機械の高度協調のデモ。人と異なる作業をロボットが行っている

また、このデモラインでは、工程ごとにカメラや機械からの情報を取得し、人と製造物の状況を1つのタイムラインに表示できるアプリケーションを紹介している。製品のバーと作業者のバーが重なっていれば、作業中だとわかり、重なっていない部分は、人がいるのに機械が稼働していないため、なにか不具合があるのではないかといったことが可視化できるシステムとなっているという。

  • 同じタイムラインに製品と作業者の状況を表示している。製品の製造工程を可視化できる

    同じタイムラインに製品と作業者の状況を表示している。製品の製造工程を可視化できる

人と機械の動きを可視化することで、工程のムダなどを分析し、作業の効率化や機械の故障のチェックなどに活用できるという。

オムロンが目指す「人と機械の融和」技術を体現した卓球ロボット

同社では、人と機械の関係を3段階と考え、1番最初の段階が人が担わなくてよい仕事を機械に「代替」させる段階、次に、人と機械の両者が「協働」する段階、そして最終段階に機械が支援して人の可能性や能力を引き出す「融和」があると考えているという。

その「人と機械の融和」を体現するロボットとして「第7世代 卓球ロボット“フォルフェウス”」が展示されている。

  • 第7世代 卓球ロボット“フォルフェウス”

    ダブルスを行う第7世代 卓球ロボット“フォルフェウス”

2013年に卓球ラリーができるロボットとして第1世代が開発されて以降、個人のスキルにあわせて対応するといったさまざまな機能が追加されてきた。

第7世代目となる今回は、ダブルスを組む2人のチームパフォーマンスを高める機能を搭載している。

具体的には、センシング技術で2人の「共感度」と「連携度」を算出し、それらを高めるラリーをフォルフェウスが行うという。

共感度はそれぞれの表情と心拍、瞬きの数をカメラでとらえ、それがお互いにどれくらい同期しているのかで判断を行う。

  • 「共感度」と「連携度」がリアルタイムに算出される

    「共感度」と「連携度」がリアルタイムに算出される

連携度は動作から判定を行い、2人の熟練度によって、速い球や遅い球を出しわけるという。そして、そのテンポを徐々に上げていき、チームとしての成長を促すという。

担当者によれば、共感度といった感情も測定し、共感と連携を促すというフォルフェウスの技術は、人が生き生きと仕事ができる環境づくりにも活かせるのではないかと考えているという。