TrendForceによると、2022年にIntelとAMDは、PC/サーバCPUとしてDDR5 DRAMをサポートすることとなり、大手DRAMベンダ各社ともにDDR5の増産に動いている。その結果、DDR3 DRAMの生産が縮小されることになる一方で、需要が増加しており、2022年第2四半期にその価格は前四半期比で0~5%ほど上昇する可能性があるという。

DDR3の生産を縮小する韓国勢、車載優先の米国勢

大手DRAMサプライヤの動きを見ると、韓国勢のSamsung ElectronicsとSK Hynixは、すでにDDR3の生産縮小を進めており、1G/2G/4GビットチップなどのDDR3製品のEOL(生産終了)を宣言する計画だという。一方の米国大手のMicron Technologyは、DDR3については2026年までEOLしないとみられるとTrendForceでは説明している。また、Micronは特殊DRAMの製造を米国内のファブに移行しているとも言われ、同ファブではコンシューマ用と車載用のDRAMを製造する予定だという。ただし、Micronとしては、車載DRAMの方が粗利益が大きく、かつ需要も増加しているので、そちらに注力する見通しのため、コンシューマDRAMの供給はひっ迫するとみられるという。

3大DRAMサプライヤ以外の台湾勢であるNanyaやWinbondはDDR3に注力しているが、現在、台湾ファブの生産能力を拡張する過程にあり、そうした新たな生産ラインの稼働は2023~2024年が見込まれている。そのため2022年にDDR3の供給量が大幅に増加することは期待できないとする。また、新興DRAMベンダである中国勢のCXMTやGigaDeviceなどはDDR3の開発を進めているが、その生産能力の増強と歩留まりの向上はいずれも市場の期待を下回る状態だという。特に米国のエンティティリストに記載されているJHICCは、現在、機器の調達に関して厳しい制限に直面していることから、ウェハ投入量を増やすことは不可能であり、かつ同社はR&Dと試作に割り当てることができる予備のリソースも有していない。同社は主に25nmプロセスによるDDR4 4Gビットチップの生産を行っており、DDR3の生産は行っていないという。

DDR3の需要回復の背景

大手DRAMサプライヤ各社がDDR3の生産を減らし、DDR5の生産量を増やそうとする動きの一方で、これまでファウンドリが利益率が低いとして優先度を下げていた高性能SoCを必要としないセットトップボックス(STB)やネットワーク製品(GPON、ルータ、モデムなど)といった最終製品向け半導体の供給が2022年初頭より徐々に改善が始まり、旧正月以降は、そうした製品を製造するために必要なさまざまなコンポーネントの入手がしやすくなったため、そこで消費されるコンシューマ向けDDR3 DRAMの調達活動も活発化し始めたという。

さらに、中国政府がSamsungのDRAM組立工場がある西安に対し、新型コロナ対策として1か月にわたる都市封鎖を実施したことから、DRAMスポット価格が2021年末に下降局面から上昇局面へと転じ、その後の2か月にわたる値上げを踏まえ、バイヤーは今後のさらなる値上げを見越して、より多くのDRAMを前倒しして調達する動きを見せている。

最終製品の需要が完全には回復していない中での調達活動の活発化であるため、今後、本格的にさまざまな最終製品の需要が回復すれば、需給ひっ迫が進む可能性があるという。