欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)は2月8日、欧州がアジアで生産された半導体へ依存しすぎている状態から脱却し、域内の半導体生産の拡大を目指すことで半導体不足に対処することを目的とした新法案「欧州半導体法(European Chips Act)」の制定を各国に提示した。ただし、この法律が成立し執行されるためには、今後EU加盟国が各国の議会で承認し、さらにEU議会で承認される必要がある。今回の発表は、あくまでも法案を提示したものであり、成立までには時間を要する。
目標はEU半導体の売上高シェアの拡大
欧州半導体法は、官民で430億ユーロ(約5兆7000億円)超の資金を調達、2030年までに世界の半導体売上高に占めるEU製半導体の割合を現在の10%から20%に引き上げることを目標に掲げている。ちなみにこの430億ユーロは2030年までの官民ファンドの累計額であり、初期投資額としては110億ユーロが予定されている。
この法律の目的は、アジアなどEU域外への半導体依存度をさげて半導体不足やサプライチェーンの断絶をさけるとともに、欧州半導体産業の研究開発および生産の競争力を高めることにあるとしている。将来的には現在のようなチップのサプライチェーンの混乱が発生しにくくすることが期待されている。
EUでは、半導体を戦略物資と捉え、補助金ルールの例外規定を設けて、EU本部だけではなく、加盟各国も個別企業の工場建設に補助金を出せるようになる。すでにIntelやTSMCが欧州(ドイツが有力)でのファウンドリ工場建設を検討しているが、両社ともEUが補助金を支給することを強く要望しており、この法律が成立すれば、外資半導体メーカーの欧州進出が加速する見込みである。
欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長は「短期的にはサプライチェーンの途絶を回避ができるよう市場の動きを監視し、供給不足への耐性を高め、中期的には欧州がこの分野で業界のリーダーになるのが目標である」と述べている。
なお、欧州半導体法には、注目を集めている「ヨーロッパに製造施設を設立するために投資家にもっと優しいフレームワークの制定」という提案のほかに以下のような提案が含まれている。
- 次世代半導体技術への投資
- 先端チップを設計するためのツールや試作・テスト・実験用パイロットラインへの欧州域内アクセス
- 機微にとんだアプリケーションに向けて品質とセキュリティを保証するための、エネルギー効率が高く信頼できるチップの認証手順の確立
- 革新的なスタートアップや中小企業の資金調達のサポート
- マイクロエレクトロニクス分野におけるスキル、才能、イノベーションの育成
- 供給の安全を確保するための半導体の不足と危機を予測して対応するためのツールの確保
- 友好国との半導体の国際協業