半導体業界に向けて高純度イソプロピルアルコール(IPA)を供給する化学メーカーのトクヤマが、韓国SKグループのSK Geo Centricと半導体製造用高純度IPAの製造・販売を目的とした合弁会社を韓国に設立することで合意し、12月29日付でオンラインの調印式を執り行ったことが明らかとなった。
合弁会社の資本金はトクヤマ、SKともに6000万ドルほどを出資し、2022年7月に韓国内に新会社として設立される予定だという。
SK側の発表によると、合弁会社では2023年までに建設を完了させ、パイロット生産を開始。2024年より年間生産能力3万トンで半導体生産用IPAの量産を行っていく計画だという。トクヤマは関連するIPA生産技術を提供し、SK Geo CentricがIPAの原材料であるプロピレンの供給、プロセスの運用、マーケティングなどを担当する。
韓国での合弁会社設立の背景についてトクヤマは、「5G、IoT、AI、DXなどの進展により半導体市場は今後中長期的に拡大の継続が見込まれ、それに伴い半導体製造プロセスで使用される高純度IPA需要も増加する見通しである。さらには、半導体の微細化の進展に伴い、高品質化と安定供給に対する顧客からの要求がますます高まってきたため」としている。これまで同社は、低不純物濃度を特徴とする独自の直接水和法で製造した高純度IPAを日本、台湾、中国、東南アジアを中心に販売してきたが、「中期経営計画 2025」で推進するポートフォリオ転換戦略の一環で韓国市場にも乗り出すことにしたという。
現在、韓国で高純度IPAを製造している企業は1社のみであり、海外からの輸入量もごくわずかだという。高純度IPAの需要は、Samsung ElectronicsとSK Hynixが工場拡張を続けているおかげで、2025年以降は現在の同国内の供給量を上回ると予測されており、そのタイミングを見計らっての参入ということとなる。
なお、IPAは、ウェハ洗浄後のウオーターマーク(シミ)の発生しない乾燥を行うために半導体工場で大量に使用されている。