Intelが2022年に本格的な供給を予定しているDDR5サポートの次世代CPUへの対応に向け、大手メモリメーカー各社は、DDR5の本格的な生産を開始しようとしている。

また、大手メモリメーカーの中でも韓国勢のSamsung ElectronicsとSK Hynixは、ファウンドリやロジックビジネスにも注力しており、Samsungは2021年第3四半期の業績説明会にて2026年までにファウンドリの生産能力を2017年比で3倍に拡大する計画であることを明らかにしたほか、SK HynixもCMOSイメージセンサの製造も行うであろう巨大ファブ4棟に加え、装置ならびに素材メーカーも拠点を構える半導体クラスタを韓国の龍仁市に建設することを計画している。

しかし、そうした活発な投資の動きがある一方、世界的な半導体ファブの新設・増設ラッシュと、折からの半導体不足により、半導体製造装置の供給不足が2022年も続くと予想されている。半導体のリードタイムが異常なほどに延びていることが注目されるが、半導体製造装置のリードタイムも延びており、例えばASMLのPeter Wennink 最高経営責任者(CEO)は同社の第3四半期決算発表の席にて、「露光装置の生産能力を増やす取り組みの中で、一部の原材料や装置に搭載する半導体部品が不足しているため、新規露光装置に対する生産の着手が遅れている」と発言し、製造遅延が生じる可能性を示唆している。

また、Lam ResearchのEVP兼CFO(最高財務責任者)のDouglas Bettinger氏も同社の第3四半期決説明会にて「リードタイムが長引いており、顧客需要を満たせていない」と述べるなど、国籍問わず、主要半導体製造装置メーカーの多くが同様の問題を抱えていることが伺える。

半導体不足への対処に向け、IDM、ファウンドリいずれも200mm以下の小口径ウェハを用いたレガシーファブも含めフル稼働をされている状況にあることから、本来、そうしたレガシーファブの閉鎖などにより出回るはずの小口径ウェハ装置の中古品が出回らず、また新規生産もすでに終了しているものが多いことから、その取引価格が急騰しているとも言われており、必要な半導体製造装置が手に入らない、という問題は2022年も続く可能性が高いとみられる。

一方の素材分野を見ても、基本的な原材料であるシリコンウェハそのものの供給不足が問題になりつつある。そのため、業界2位のSUMCOは、新たな300mmウェハ製造工場の設置を表明。他社も追随する動きを見せている模様で、半導体デバイスメーカー側もそうした増設分のウェハに対して、5年間にわたる長期供給契約を結ぶなど、ウェハの入手不足解決に向けた動きを見せている。

また、中国の電力消費規制によって、シリコンウェハの原材料となる金属シリコンのほか、アルミ、マンガン、ニッケル、クロムといった大量の電力を消費して溶解/精製が必要な素材が供給に対する影響を受けているという。

さらに中国の電力消費規制は、窒化シリコン膜のエッチングに必要なリン酸(液体)の元となるリン鉱石を溶かして、黄リンを製造する際にも大量の電力を必要とするため、そうした黄リンの製造工場の操業停止や廃業を引き起こしており、生産量の減少と供給不足に伴う価格高騰が生じつつあるという。

半導体製造で使われる超高純度リン酸(液体)は日本国内の化学メーカー3社が世界市場の8割程度を握っている。各社ともに、入手困難な中国製の黄リンに代わってベトナムからの輸入に切り替えを進めているというが、ここでも中国企業との奪い合いが起こっている模様で、中国政府による電力消費規制の解除ないし軽減が実行されないと、今後はリン酸のみならず、中国が主要原産地である蛍石(フッ化カルシウム)を原材料としたフッ酸の製造をはじめさまざまな半導体製造向け素材にも影響が及ぶ可能性があるとみられる。