小型ロケット「イプシロン」5号機が9日午前9時55分16秒、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)で打ち上げられた。宇宙空間で実証する部品や機器を搭載した小型衛星、企業や大学などの超小型衛星の計9基をそれぞれ所定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。イプシロンは2019年1月以来、約2年10カ月ぶりの打ち上げで、5回連続の成功となった。

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    技術実証衛星9基を搭載し打ち上げられるイプシロン5号機=9日午前、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所(JAXA提供)

9基のうち小型衛星は1基で、小型で省電力のコンピューター、3Dプリンターで製作した廉価版アンテナなど、6つの部品や機器を搭載。超小型衛星8基は姿勢制御の実証衛星、宇宙ごみ捕獲装置の実証衛星、粘菌の飼育実験衛星など。高等専門学校10校が連携して開発した木星電波観測衛星も含まれる。

打ち上げ後に会見したJAXAの山川宏理事長は「大変ホッとしている。(イプシロンは)今後も確実に打ち上げ経験と実績を蓄積し、小型衛星の打ち上げ需要により柔軟に対応し、イノベーション創出に挑戦していく」と述べた。

ロケットや衛星は打ち上げ後に直接の修理ができないため、一般に信頼性が確立した部品や機器を採用する。技術革新や旧来品の枯渇などにより新たなものを採用する前に、宇宙空間での実証が望まれる。そこで政府は宇宙基本計画に実証機会の提供を明記。これを受けJAXAが「革新的衛星技術実証プログラム」を、計7回の予定で実施している。2019年のイプシロン4号機による初回に続き、今回が2回目。搭載した計14の部品や機器、衛星は、33件の応募から選ばれた。

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    衛星9機を搭載したイプシロン5号機の内部を描いた図(JAXA提供)

JAXAの金子豊・革新的衛星技術実証グループ長は「国内の企業や大学、研究機関の技術とアイデアを宇宙で実証し、日本の技術の発展と産業の国際競争力を高めるのが目的」と述べている。

打ち上げは当初、先月1日に計画されたが、異常を検知し19秒前に中止した。JAXAによると、原因は打ち上げ後にロケットを追跡するレーダー装置のトラブル。GPS(衛星利用測位システム)の信号を受信アンテナから取り込むケーブルの接続部が緩んで接触不良が起きており、打ち上げの24分前になって監視画面に誤った時刻が表示された。ケーブルの自重で接続部に負荷が生じていたとみられる。

レーダー装置は移動式で、打ち上げのため種子島宇宙センター(同県南種子町)から同観測所に運び込んだもの。再発防止のためケーブルを支える工夫をしたほか、他の移動式の装置を含め、同様の接続部200~300カ所を点検した。イプシロンの打ち上げ直前の延期は2013年の初号機以来となった。その後、先月26日の種子島での大型ロケット「H2A」打ち上げ計画との調整が必要となったことや、気象条件の制約などで延期が繰り返されていた。

イプシロンは3段式の固体燃料ロケット。1段目をH2Aの固体ロケットブースターと共通にしたほか、点検や管制の合理化などでコストを抑制している。5号機の打ち上げ費用は58億円。2023年度の打ち上げに向け開発中の後継機「イプシロンS」では、今年度に初打ち上げを予定するH2Aの後継機「H3」との間で技術や部品の共通化をさらに進める。

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