韓国科学技術情報通信部傘下の政府系研究機関である韓国材料研究院(KIMS)は、2つの企業(LT MetalとSTECO)と3つの大学(慶北大学、安東大学、漢陽大学)と共同で半導体素子接合プロセス用の無シアン(Cyan-Free)金めっき液およびめっきプロセスの技術開発に着手することを明らかにした。
この技術開発プロジェクトは韓国産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)が推進する「素材部品技術開発事業」に選定され、2021年7月から2022年12月までの1年6ヵ月間にわたって、政府の支援を受ける形で進められる予定だという。
現在、PCBおよびコネクタ金めっき工程に使用される金めっき液はシアン(Cyanide)タイプが主流であるが、環境面での問題から、無シアン金めっき液の活用が求められている。シアンは、青酸のことで、これが含まれた金めっき液は危険物・毒物に分類され、環境への負荷が大きい製品として知られるが、現在、無シアン金めっき液市場は100%日本製製品で占めている状態だという。
KIMSはそうした状況を受け、国産化推進のため、LT Metalと2020年より議論を進めてきたという。LT Metalは金めっき液製造施設をはじめ、めっき液評価のためのインフラを有しており、無シアン金めっきプロセスに使われる亜硫酸金ナトリウム(Na3Au(SO3)2)を作れる数少ない企業の1社だという(残りは日本の田中貴金属グループの日本エレクトロプレイティング・エンジニヤースと同じく田中貴金属グループのスイスMetalor Technologies Internationalの2社のみだという)。
同開発プロジェクトでは、LT Metalを中心に、今後、無シアン金バンプめっき液、めっきプロセス技術、金バンプ接合プロセス、信頼性評価技術、次世代技術開発など目指して研究開発協力を進めることにしている。
なお、KIMSでは、無シアン金バンプめっき液に関連する技術は、川下産業であるテレビ、携帯電話、車載ディスプレイパネルなどのほか、川上産業である機械産業、素材産業、電子産業にも関連しており、そうした現在の主要産業群のみならず、詳細の3D半導体などの技術にも波及効果がおよぶとして、将来的には海外への技術輸出基盤の構築も目指したいとしている。