日立製作所は8月25日、EV充電設備の小型・軽量化を実現するとともに、充電容量とポート数をフレキシブルに変更できる拡張性を備えたEV充電技術を開発し、350kWマルチポートEV充電システムを試作したと発表した。
カーボンニュートラルの実現に向け、グローバルでEVシフトが加速しており、人口が集中する都市部ではEVの導入に伴い、EV充電設備のニーズが増加し、特に充電時間を短縮できる急速充電設備が求められている。しかし、急速充電に対応するために充電器を大容量化すると充電設備が大型化するため、設置場所が限られる既設の集合住宅やビルに設置することが困難であることが課題として挙げられていた。
そこで、同社ではこれまで培ってきた電力変換技術や高周波駆動技術を生かしEV充電設備の小型化や急速充電に対応する技術の開発を行ってきたという。
今回、同社はパワー半導体を用いて変圧器を高周波駆動させることで小型化する半導体変圧器(SST)を開発。SiCにより駆動周波数を従来の約1,000倍(50kHz)に高めることで伝送可能な電力を増大させ、急速充電を可能にするとともに、設置面積を約40%削減、重量を約70%削減し、小型・軽量化を実現したとしている。
また、7段接続した電力変換ユニットで6.6kVの入力電圧を分担するマルチレベル回路を開発し、これを3並列、合計21台の電力変換ユニット構成とし、切替スイッチで出力を制御することで、ユーザーニーズに応じて、充電電力とポート数をフレキシブルに変更することが可能。例えば、普通充電(17kW)であれば21台のEV、急速充電(50kW)であれば7台のEVを同時に充電することができるという。
超急速充電(350kW)に対応する拡張性も有しており、今後普及が進む大容量バッテリーEVの短時間充電を可能にするとのことだ。
今後、同社では同技術の実用化に向けた研究を進めるとともに、日立グループ全体で連携することで、新しいエネルギーソリューションや、EV運用管理などのサービス事業を創出し、脱炭素社会の実現に貢献していくとしている。