IC Insightsが、2021年の車載マイコン市場は、供給不足により自動車メーカーが一時的な減産を決定するという事態に陥っているにも関わらず、前年比23%増の76億ドルと過去最高額を更新するとの予測を公表した。
車載マイコン市場は、過去10年間にわたってマイコン市場全体の約40%を占める巨大市場であるが、2017年には同12%増と伸びた後、2018年には同1%増、そして2019年、2020年は前年比マイナス成長に陥る事態に陥るなど、必ずしも右肩上がりで成長を続けてきたわけではない。
しかし、自動車市場の景気は2020年の夏を境に上向きに転じ、車載マイコンの需要も回復したものの、景気後退期に減産して空いた製造ラインは、ほかの用途のマイコンや、ほかの種類の半導体で埋まってしまっており、需要回復の波に完全に乗り切れていない中での過去最高額更新の見通しとなっており、同社では2022年も同14%増、2023年も同16%増と3年連続で2桁成長を達成すると予測している。
車載マイコンの供給不足はいつ解消されるのか?
2021年2月、米国テキサス州を襲った寒波の影響によって生じた大規模な停電に伴い、車載半導体を製造していた複数のウェハファブも操業を停止する事態に陥ったほか、3月には日本でルネサス エレクトロニクスの300mm工場で火災が発生するなど、車載半導体メーカーが自然災害の影響を受ける状況が続いているが、ICメーカー全体としてみると、車載マイコンの生産量は増加傾向にあるという。
例えばファウンドリ最大手のTSMCでは、2021年第3四半期の車載マイコン生産量を前年同期比で60%増とするとしており、これは新型コロナのパンデミック前のレベルと比べても30%増のペースであるとしている。
また、車載マイコンの売り上げの3/4以上が32ビット品で、2021年は約58億ドルと予想されている。続いて16ビット品が13億4000万ドル、8ビット品が4億4100万ドルと予想されている。
さらに、供給不足を背景にその平均販売価格(ASP)も上昇しており、32ビット品の場合、2015年から2020年の間に年平均成長率4.4%減と下落が進んだが、2021年は前年比13%増の0.72ドルまで上昇するとみられるという。 なお、アプリケーション別として車載マイコンの用途を見た場合、エンジン制御、パワートレイン、ブレーキ、ステアリング、パワーウィンドウ、バッテリー管理などの主要用途部分が売上高の90%を占め、残りの10%をインフォテインメントが占めると予想されている。それぞれの2021年の市場規模は、主要用途が同20%増の68億ドル、インフォテインメントが同59%増の7億8000万ドルとなると見られている。