資金繰りが悪化し債務不履行(デフォㇽト)を繰り返している中国の国策半導体大手企業である清華紫光集団(Tsinghua Unigroup)は、7月9日付で債権者である金融機関が同集団の破産・再編を進めるように裁判所(北京市第一中級人民法院)に申請した旨の通知を受けたことを明らかにした。同集団は、法律に基づいて裁判所の審査に全面的に協力し、裁判所が債権者の合法的な権益を守ることを支持するとしている。

2017年に発行された13億元(約200億円強)規模の清華紫光集団の私募債「17TsinghuaPPN005」は、2020年11月16日に債務不履行となり、その後も同社が発行した複数の国内債券と海外米ドル債の一連の債務不履行が生じている。同集団は、積極的なM&Aに資金を投じていたが、すぐには買収成果がでないことから、高いプレミアムを上乗せした債券発行に過度に依存した資金調達に問題があったのではないかと中国金融関係者は見ている。

紫光集団は習近平国家主席の母校であるハイテク研究の本拠である清華大学が51%を出資する企業で、英語名のTsinghua Unigroupは清華大学集団という意味で、いわば習近平主席の息のかかった国策半導体投資集団ともいえる。過去には、米Micron Technologyやキオクシア(旧東芝メモリ)の買収も企てたことがあるが実現しなかった。

現在、同集団の傘下には、

  • Xtackingという独自のウェハ張り合わせ技術を用いて3D NAND型フラッシュメモリの量産を手掛ける長江存儲科技(YMTC)
  • 半導体チップ設計や水晶振動子、LED照明用サファイア基板の製造・販売.を手掛ける紫光国芯微電子(紫光国微:Unigroup Guoxin Microelectronics )
  • Huawei/HiSiliconに次いで中国第2位の半導体ファブレスIC設計企業の紫光展鋭(UNISOC。紫光集団が買収したファブレスSpreadtrum CommunicationsとRDA Microelectronicsを合併したSoC設計企業)

など多数の半導体企業の持ち株会社的な役割を果たしてきたが、親会社の債務不履行は、これら子会社の日常業務には今のところ影響を与えていないという。というのも、傘下企業はそれぞれ独自に政府系ファンドや政府からの支援を受けており、親会社に異変が生じても各社の経営への影響は限定的とみる見方が中国では有力である。

紫光集団は、自らもDRAM製造に乗り出そうとして、海外DRAM企業から技術導入の当てのないまま、エルピーダメモリの社長などを務めた坂本幸雄氏を中国本社副総裁兼日本子会社社長として迎え入れるという動きも見せている。

習近平政権は、今のところ清華紫光集団に支援の手を差し伸べてはいない。米国バイデン政権は中国国内企業への中国政府の巨額補助金や中国共産党との結びつきに目を光らせており、なんとか政権の息のかかる紫光集団を制裁対象にできないか検討を重ねているといわれており、今後の米中両政府の動きが注目される。