ベルギーimecは、7月6-9日の期間でオンライン開催されたLSI多層配線技術に関する学会「2021 IEEE International Interconnect Technology Conference(IITC2021:多層配線技術国際会議)」において、抵抗率に焦点を当てる形で、1nmを超えるロジックプロセスに向けた配線材料の探索研究結果を発表した。
1nmプロセス以下のロジックデバイスの実現には、BEOL(多層配線工程)でクリティカルな配線層に新しい材料を導入する必要があると考えられており、現在、従来の配線向け金属(Cu、Co、Mo、Ruなど)よりも抵抗率が低い2成分および3成分の金属化合物(AlまたはRuベースの金属化合物)が探索されている。
imecでも、AlNi、Al3Sc、AlCu、Al2Cuなどのアルミナイドの薄膜の抵抗率挙動を実験的に調査しており、20nm以上の厚さでは、いずれのPVDで堆積した膜は、RuまたはMoと同等またはそれ以下の抵抗率を示したという。また、28nm厚のAlCuおよびAl2Cu膜で、抵抗率が9.5μΩcmともっとも低い値が得られたという。これはCuの抵抗率を下回る値だという。さらに実験から、アルミナイドという材料の課題も明確になったとimecでは説明しているほか、従来のデュアルダマシン構造の代替として提案しているセミダマシン構造において、適用できる可能性が示されたとしている。
このほか、imecでは、より高いアスペクト比の配線を実現するために、高度なセミダマシンプロセスにおける配線層間に部分的または完全なエアギャップを導入することにより、RC遅延をさらに改善することができるとしている。ただし、エアギャップの熱伝導率は低いため、動作条件でのジュール熱による多層配線の温度上昇が懸念されることから、12層BEOL構造をベースとしたジュール熱の測定に向けたモデリングを実施。その結果、エアギャップによって温度が20%上昇するとの予測結果が得られたとのことで、金属密度が高いほど、ジュール熱の低減につながることが示されたとしている。
なお、imecのフェローでナノインターコネクトのプログラムディレクターであるZsolt Tokei氏は「今回の知見は、1nmプロセス以降のロジックプロセス実現に向けたセミダマシンメタライゼーションスキームの改善に向けた鍵である。今後もimecは、プロセスの統合と信頼性に関連する重要な課題を解決しながら、ハイブリッドメタライゼーションや新しいミドルオブライン(MoL)スキームなど、他のオプションも並行して研究して1nmを超えた微細化に向けてロードマップを拡張していく」と今後の方針を述べている。