米Teslaは、世界的な半導体不足のなか、必要な車載半導体の確保に向け、前金を支払って半導体を購入する案をSamsung ElectronicsおよびTSMCなどの半導体ファウンドリと交渉中であると英Financial Timesが5月26日(欧州時間)に関係者の話として伝えたのに続き、複数の韓国および台湾メディアも報じている。

ファウンドリ業界関係者によると、生産能力を顧客の購入代金の規模に応じて、流動的に配分することで高い収益性を確保してきたことから、先払い契約を避けてきたという。しかし、現在Teslaに半導体を供給しているSamsungの関係者は、「顧客である自動車メーカーが徐々に自社のクルマに合わせた特注製品を要求する傾向が強まっており、既存の半導体供給契約方式も変化しなければならないだろう」と述べているという。

なお、Teslaは自動運転車に搭載される半導体を設計するエンジニアリングチームを保有しており、さらなる独自半導体の開発に向け、Samsungと5nm級の専用チップを開発中であるとも伝えられている。

Teslaは半導体工場買収も検討

ファウンドリへの前払い交渉とは別に、Teslaは長期的には半導体製造工場の買い入れも検討中だという。まだ検討の初期段階であり、その買収費用は最大で200億ドルと見積もられるほど莫大であること、ならびに買収後に、工場の運営に慣れる必要があることなどを考えると実際には実現は難しいとみられるという。

しかし、将来、自動運転技術が進化して、クルマが鉄の塊から「半導体の塊」になれば、今回のような車載半導体不足を避けるためにも、自動車メーカーがEVのキーコンポネントになる半導体の製造に向け、自社内に半導体工場を持つ時代が来てもおかしくはない。デジタル家電製品が、システムを詰め込んだSoCに電源と筐体をつければできるようになったように、自動車業界も、ライバルとの差異化のために独自のSoC設計とそのための製造リソースの確保が重要になることが考えられるためである。