SEMIが発表したSEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)によるシリコンウェハ業界の分析結果をもとに、2021年第1四半期のシリコンウェハ出荷面積は前期比4%増の33億3,700万平方インチと、四半期別で過去最高を記録したという。

シリコンウェハ不足解消に向け、ウェハメーカーが増産を検討

シリコンウェハの四半期別出荷面積が過去最高を記録したが、半導体需要は依然として高まりを見せており、既存のウェハ製造施設での増産だけでは需要を賄えなくなってきており、2023年もウェハ不足が続くことが予想されるようになってきた。

このため、すでにシリコンウェハメーカーによる値上げ交渉が始まっているとされるが、その一方で供給不足解決に向け、大口ユーザーである半導体デバイスメーカーからは、新たな工場建設の要望がでているという。

こうした動きを受けてウェハ業界最大手の信越化学は、2021年3月期通期決算発表の場で、新工場建設を検討していることを明らかにしているが、顧客との長期購買契約などを通して需要を精査中で、生産数量や工場建設場所など詳細はまだ白紙状態だという。業界2位のSUMCOも新工場建設を検討している模様だが、顧客が大幅な値上げを受け入れるか否か次第だとしている。

業界3位の台湾Global Wafers(環球晶円)は同4位の独Siltronicの買収手続き中で、スケールメリットで日本勢に肉薄しようとしているが、業界関係によると、最先端デバイス向けウェハの品質では上位2社に差をつけられていると言われている。5位の韓SK Siltronも韓国内を中心にウェハ需要が急騰しており、亀尾市の本社工場はフル稼働中であることから、新工場の建設を検討している模様だという

先端デバイス向けのウェハ品質は、直径300mの競技場に拡大した場合、その競技場の高低差は0.1mm以下に収まっているという。また、甲子園球場の広さにピンポン玉1つが落ちているだけで不良品扱いとされるほどのクリーンさも求められるという。こうしたウェハの品質は、そのまま半導体デバイスの品質に直結するため、TSMCなど、先端デバイスの製造・開発企業は高品質なSUMCOや信越化学をパートナーに選ぶ必要がある。

この2社以外が、品質面で追いつくためには時間がかかるほか、SUMCOなども5nm向けウェハの量産初期は歩留まりがあがらず、作れば作るほど赤字という状況であったともされており、将来的なより微細プロセスに対応する高品質ウェハの生産のためにも値上げは必要としており、値上げの進展次第ですぐに新工場による増産の決定を下すものとみられる。

2社ともに、候補地の選定を含め(工場を1から立ち上げる)「グリーンフィールド」の検討を進める意向を示しており、中でも信越化学工業は、2023年以降に300mmウェハの生産能力拡大を検討していることを明らかにしている。

しかも同社は、ウェハの原料となる結晶シリコンのインゴットとシリコンウェハ、エピタキシャルウェハのいずれの段階でも投資を行うことを検討しているが、具体的な新工場建設なのか既存建屋への設備増設とするかは未定としている。